病院の実績・必要性を説明する良い機会に
再編統合424病院公表を受けて
再編統合対象の公立・公的病院名公表問題を受けて、京都府内の公立・公的病院が果たしている地域での役割の重要性を再確認するべく、今回は国立病院機構宇多野病院の齊藤三則事務部長に話を伺った。
――再編統合対象424病院の公表を何で知ったか。
新聞報道で知った。病院の方針は10月25日にホームページに掲載。当初、9月27日の発表後は、患者さんへの対応として外来で主治医から病院の方針などを伝えるよう努めた。
しかし、当院380床のうち急性期病床50床が、一定のスケールでもって評価されたものの、380床全体の評価ではないということは、病院側は理解していても一般の方たちにはわからない。その内容をどういった表現で伝えればよいかと考え、今後の病院の方針をホームページへ掲載することとなった。
――それは逆に患者さんからの反響が大きかったということか。
患者さんからの問い合わせがあったと医師から聞いている。数字を把握しているわけではないが、多くの患者さんが不安を持っておられるようだ。
病院スタッフについては、各職場長が集まる管理診療会議で、私から今回の病院名公表の経緯を説明し、各職場長からスタッフに病院がなくなるわけではないこと、今まで通り診療を行っていくことを伝えてもらった。今回の件に関しては、当院の院長も福知山市民病院や舞鶴赤十字病院、国保京丹波町病院の院長と同じく、唐突な発表に戸惑いを持った。今後は地域医療構想調整会議の中で急性期病床の必要性を訴えていかなければならないと考えている。
――病院が果たしている役割についてお聞きしたい。
当院の患者さんは脳神経内科の中で神経・筋難病が一番多く、脳リハビリ科、発作科、整形外科、小児科、リウマチ科、循環器内科、脳神経外科を中心に標榜し、日々生活に困っている難病患者さんを中心に診療を行っている。380床のうち、新聞で公表された急性期病床50床、回復期病床55床があり、残り275床で神経・筋難病等の患者さんを受け入れている。
当院は、国の政策医療を担う国立病院機構として、主にセーフティーネット系を担当。指定難病335疾患のうち、49疾患の診療を行っている。毎年秋に患者さんの定点調査を行っていて、入院患者さんのうち70%が難病患者さんとなっている。
疾患でみると、パーキンソン病が一番多く73%、筋ジストロフィーが22%、その他にALS、筋委縮側索硬化症、多発性硬化症、脊髄小脳変性症、重症筋無力症、悪性関節リウマチなどの疾患を診ている。
ある統計資料との比較においては、京都府内では2万人が難病の受給者証を取得しており、当院では京都府外の受給者証をお持ちの患者さんも含めて1100人が受診している。パーキンソン病で調べてみたところ、京都府内には3331人の患者さんがおり、そのうち当院には592人、18%が受診されている。
当院は臨床研究部を設置しており、患者さんのデータベースをもとに臨床研究や治験に積極的に取り組んでいる。また、認知症、パーキンソン病をはじめとした神経変性疾患、神経免疫疾患、てんかんの治療実績が豊富にあり、難治性疾患の新規治療開発にも力を入れている。
――急性期病棟に対するお考えは。
当院は救急告示病院であるが、全科体制ではなく標榜科も限られるため、救急受入患者さんは少ない。2018年度実績では救急受入患者は524人で入院は191人。このうちの175人を、今回再編統合対象とされた急性期病棟で受け入れている。この175人のうち84人が難病患者さんであった。つまり、この急性期病棟50床がなかったら、難病患者さんを受け入れられていないということだ。難病が重篤化して救急搬送されることもあるが、例えば基礎疾患に難病をお持ちの患者さんの誤嚥性肺炎や熱発、骨折等の受入が必要となる。病院としては、今後もこういった機能をしっかりと維持し対応していかなければならないと考えている。
――最後におっしゃりたいこと。
今回、厚労省が公表した再編統合対象の切り取り方も一つの見方だろう。当院としては、424病院が公表されたことで、地域医療構想調整会議の中であらためて診療実績を示し、当院の必要性を説明していく良い機会と捉えたい。