地域医療をきく! 7 舞鶴赤十字病院編  PDF

再編・統合対象病院公表 “余計なお世話”

 地域の医療現場で抱える課題や実情を尋ねる「地域医療をきく!」。京都府内の公立・公的病院が果たしている地域での役割の重要性を再確認するべく、舞鶴赤十字病院の西田和夫院長にお話を伺った。聞き手は吉中理事。

 ――424病院の公表で率直に感じられたことは
 今回の再編統合の件は、報道で知った。翌日には多々見舞鶴市長から「舞鶴にとって必要な病院であることに変わりはない」、その後、西脇京都府知事からも「再編も、病床数の削減も全く考えていない」との力強いコメントをいただき、これらを受け、病院としては職員に院長のコメントを発表したり、説明会を行ったりした。
 京都府からの詳しい説明等はないままだが、当病院が何億円もの赤字を出しているということもなく、割と鷹揚に構えている。これが経営の厳しい病院だとかなりのプレッシャーになっているのではないか。
 ――地域の医療提供体制は
 舞鶴市の医療体制は、2010年に策定した中丹地域医療再生計画から始まっている。ご存知のことと思うが、そもそもは04年に市立舞鶴市民病院の経営方針を巡って内科医の大量辞職が発生し機能を縮小せざるを得なくなって、赤字問題も顕在化。地域全体を巻き込んで医療提供体制が麻痺する事態となった。
 このような経過を受けて、舞鶴市の医療再生が喫緊の政治課題となり、「舞鶴地域医療のあり方検討委員会」を設置。「四つの公的病院を一つないし二つにすることが望ましい」という答申をえて、「公的4病院を基幹的病院とサテライト病院の二つに再編」というグランドデザイン案が策定された。
 しかしながら、設置者の異なる四つの病院を再編・統合するのは容易なことではなく、その後の市長選で、4病院が連携して地域医療を確保する新しい形の地域医療再生を訴えた現市長が当選。機能分化と連携を進めることによって、公的4病院があたかも一つの総合病院として機能するような提供体制の構築を目指す案が提示された。これは国、京都府にも承認されて、中丹地域医療再生計画が始まった。私もこの時期には厚労省へ出向き折衝をした。この経過は『病院再編・統合ハンドブック』(東日本税理士法人・日経メディカル開発、2017年)にも収載されている。
 4病院のネットワークは構築されたが、内科医を中心に医師不足は当時よりも深刻になっている。医療崩壊と言われて久しいが、舞鶴はある意味、崩壊しているのかもしれない。舞鶴の医療の特徴は慢性期の病床がない、民間病院が少ないことだと思う。
 ――舞鶴赤十字病院が担う機能は
 舞鶴市の生活圏は東舞鶴、中舞鶴、西舞鶴に分けることができる。舞鶴市民病院は東舞鶴にあったが、西へ移転。現在、当病院の横に設置されている。舞鶴共済病院と舞鶴医療センターはそのまま東舞鶴で、市民病院は療養100床、共済病院は循環器科を中心に一般310床、医療センターは脳卒中、周産期、小児を中心に一般280床。当病院は整形外科、リハビリを中心に一般150床、回復期48床という状況だ。
 今回の424病院公表では、がん、心臓などの診療実績がマーカーになっているが、先ほども述べたように舞鶴では機能分化を行い、他病院と連携して対応するシステムになっている。それは承認した厚労省も分かっていることのはず。
 全国の公立の病院の赤字問題をどうにかしたいということなのかもしれないが、医師ですら今回の公表ですぐに病院がなくなるのではという不安を持った。患者さんはなおさらだ。
 当病院は半分が慢性期みたいなもの。しかもメインが整形外科で、舞鶴の患者さんの70%は当病院で診ている。整形外科の患者さんはすぐ回復期に移るので、一般と回復期の病床という当病院の病床構成は妥当だと考えている。
 ――地域医療調整会議での議論は
 中丹医療圏での全体の地域医療構想調整会議とは別に、福知山、綾部、舞鶴とそれぞれでの地域で調整会議の部会のような会合も行っている。しかし、高齢化が進み出席者の範囲が介護関連まで含まれて広く、医療構想よりは介護に話題の中心が移ってしまっている。病院だけで集まらないと議論が深まらず、既存の地域医療構想調整会議でこの再編・統合の議論ができるのか、はなはだ疑問。
 ――厚労省に対して言いたいことは
 厚労省から再編・統合を考えろと言われるまでもなく、病院の病床を含めた体制は常に考えている。経営者としては当然のこと。「余計なお世話」としか言いようがない。
 厚労省も急性期を減らしたい一心なのだろう。厚労省の政策全てを否定するつもりはないが、もっときめ細かい議論をしてもらわないと「害多くして利益なし」だ。今回の件は、「さすが、厚労省のお仕事」だと思った。

ページの先頭へ