市民無視した一体化方針の撤回を 京都市3施設の合築方針を考えるフォーラム開く  PDF

 協会も参加する「京都市の3施設合築方針を考える実行委員会」が4回目の市民フォーラムを12月15日に京都市内で開催した。京都市児童福祉センター、京都市地域リハビリテーション推進センター、京都市こころの健康増進センターの3施設の一体化について、京都市はすでに設計段階に入った。方針が明らかとなった2014年以降、実行委員会は継続して対抗運動を組織してきた。本フォーラムは一体化方針進捗の現段階を確認し、深刻な影響が予想される子どもの分野についての掘り下げた検討を行う場となった。参加者は31人。司会は池添素氏(京都障害児者の生活と権利を守る連絡会)が務めた。

市の一体化の既定方針化を批判

 冒頭、実行委員会を代表し、渡邉副理事長が「一体化は絶対やったらあかん」という思いを京都市に訴えたいとあいさつ。続いて「3施設一体化はどこまできたか」と題し、永戸有子氏(京都市職員労働組合執行委員長)が基調報告。市が初めて合築方針を明らかにした14年2月以来、市当局は合築の是非を市民や議会に諮らないまま既定方針化したことを批判。こうした政策手法の根本に課題を把握し、課題解決のために何が必要かというプロセスを踏まずに物事を決定する市の姿勢があると指摘した。その上で、合築の問題点を、①「障害」で括る合築施設に「子ども」を対象とする児童福祉センターまで入れてしまうこと②障害のある人たちの人権、子どもたちの発達と人権を守るために何が必要かを検討もせず、「合築ありき」で進めてきたこと③合築が機能縮小・公的責任の放棄につながりかねないこと④面積の縮小による機能縮小が危惧されること―の四つの観点から指摘した。

療育の現場などから実状を報告

 続いて、連続講演として3氏が壇上に立った。
 「療育の現場から~これが京都市のやり方か!!~」と題して講演した坪倉吉隆氏(パーチェ梅小路、こどもたちの保育・療育をよくする会)は、児童福祉センターの専門スタッフが人員不足と虐待ケース増加の中、専門性を十分に発揮できていない実状を告発。子どもの発達や子育てに悩む保護者が、「1人で悩まなくていいんだ、相談してたらいいんだ」と思えるよう、ちゃんと寄り添う行政であってほしいと思うと述べた。
 「京都市の子育て政策はどうあるべきか?」と題して講演した田中智子氏(佛教大学)は、京都市では「家族のパワー」によって子どもたちの育つ環境に格差が生じており、お金がなく、人とつながるのが苦手な保護者が子育てをしにくい。これは京都市が子どもの育つ環境・社会とはどうあるべきかについての“哲学”をまったく持っていないことに原因があると指摘。子どもは社会の成熟度をはかる羅針盤であり、子どもを政争の具にしてはならないと訴えた。
 「3施設一体化構想を生んだ京都市政、子どもたちの現実」と題して講演した藤井伸生氏 (京都華頂大学)は、19年2月に実施した京都市内の小中学生対象のアンケート結果を報告。子どもたちの7割は「学校は楽しい」と回答しているが、「学校生活で変えてほしいこと」を聴くと、「夏休みを長くして」「休み時間を増やして」「給食を良くして」と、切実な願いを訴える声が多数を占めた。このような子どもたちの生の声から出発して、子どもたちの教育や福祉施策を京都市が進めるべきと指摘。その上で子どもの育ちを保障する世界各国の施策や公共施設を紹介。それらの国々では子どもの権利と発達を保障する仕組みが作られているのに対し、京都市では区役所における子育て相談機能自体が貧弱であり、学ぶべき点が多いことを報告した。

医療や福祉大切にする政治を

 フロアからは市リハセンの看護師や療育に通う子どもの母親から発言があり、最後は3人の市長候補予定者に対し「どうか、市民の子育て、リハビリ、心の健康を支えてきた三つの施設をそれぞれ大切に守り、育てて下さい。そしてもう一度、医療や福祉を大切にする政治を、市民といっしょにやり直しませんか」と呼びかける「新しい市長への手紙」を参加者一同で採択し、終了した。

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