厚生労働省が1月17日付で通知「公立・公的医療機関等の具体的対応方針の再検証等について」(医政発0117第4号、2020年1月17日)を都道府県知事宛に発出した。
昨秋、厚労省は「再編・統合を求める」公立・公的医療機関424病院のリストを実名で公表し、医療関係者・自治体を混乱に陥れ、住民の不安を煽った。だが本通知が出されたことは、厚労省が混乱・不安の本質を手続き上の瑕疵にすり替え、本質的には無反省に当初方針を貫徹する姿勢であることを示している。
混乱を受け、厚労省は「地域医療構想に関する自治体等との意見交換会」を各地で開催。一方、総務省とともに「地域医療の確保に関する国と地方の協議の場」を10月以降3度にわたり開催した。厚労省は協議の場で自治体の理解が得られた、「みそぎ」を済ませたと判断したのであろう。
通知は名指しした病院への地域医療構想達成に向けた「具体的対応方針」「再検証」を正式に求める内容である。すなわち身の振り方を考え直せ(通知の言葉でいえば「地域の医療需要等を踏まえつつ、地域の民間医療機関では担うことができない高度急性期・急性期医療や不採算部門、過疎地等の医療提供に重点化するように医療機能を見直し、これを達成するための再編・統合」)というものである。
通知は、「経済財政運営と改革の基本方針2018等」の指示を受ける形で、公立公的医療機関が「当該医療機関でなければ担うことができない機能に重点化」されているかどうかを、①診療実績が特に少ない(診療実績が無い場合も含む)②構想区域内に、一定数以上の診療実績を有する医療機関が二つ以上あり、かつ、互いの所在地が近接している(類似かつ近接)―という二つの尺度で分析したと説明。その結果、対象となった医療機関に対して再検証を求めている。
再検証については、①都道府県が名指しされた公立・公的医療機関に対し再検証を求める②再検証を求められた医療機関は対応方針をまとめ、地域医療構想調整会議の再検証を受け、合意を得る③同時に都道府県は2025年の医療提供体制について改めて協議する―との手順が示されている。
資料として都道府県に提供されたのが「公立・公的医療機関等の診療実績のデータの分析結果」(いわゆる424病院リスト)である。ただし、リストは昨秋のものより精査され、424病院のうち東京都の済生会中央病院はじめ7医療機関を除外(京都府の病院は除外されず)し、新たに約20医療機関を追加したと報じられているi(追加分は現在非公開)。
加えて「病床機能報告で高度急性期または急性期病床を持つと報告した民間医療機関リスト」(約3200医療機関)と「公立・公的医療機関と競合すると考えられる民間医療機関リスト」(約370医療機関)が新たに提供された。前者は基本的に公立・公的と同様の項目による分析データとされ、公表可否が都道府県に委ねられていると報じられているii。
厚労省は、地域における医療機関の歴史と役割を理解せず、一律の尺度ではじき出したリストをかざし、都道府県の音頭取りで医療提供体制を改変させようとしている。新たに提供された公立・公的と民間医療機関の競合データは、さらなる混乱と分断を地域に持ち込む。さらにデータ非公表が住民を議論から排除するだろう。
先述の協議の場で厚労省は、地域医療介護総合確保基金の活用に加え、84億円(2020年度)の全額国費によるダウンサイジング支援の予算化を説明した。だが多くの自治体の怒りはダウンサイジングする資金がないことによるものではないはずである。
地域にその医療機関があることの意味は、住民一人ひとりの生活や人生と分かち難く結びついている。地方自治体は国よりも遥かにそのことを理解している。自治体・医療機関・住民が一体となり、国策に対峙する時がきた。
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i メディファクス8186号(2020年1月20日)
ii メディファクス8175号(2019年12月25日)