死んでたまるか5 ただいま、リハビリ奮戦中 超急性期リハ 垣田 さち子(西陣)  PDF

 目覚めたと言っても、ヘルメットをかぶせられたような朦朧とした状態で、ドラの音のような金属的な耳鳴りが響いており、人が話していてもその声が聞こえない。しゃべるのだが、発声がうまくできない。猫の鳴き声のような独特の構音構語障害だった。意思の疎通はホワイトボートでの筆談になった。書かれた字は読めるのだが、私が書いたら字にならなかった。
 3~4日目には超急性期リハビリが始まった。
 2019年11月号の日本リハビリ医学会機関紙の特集は「集中治療室から開始する急性期リハビリテーション」である。ICUでの鎮静、安静臥床が引き起こす循環血液量減少、交感神経応答不良、心肺機能低下、筋力低下、関節可動域減少などが問題となり、早期離床、不動予防を積極的に目指し、従来から指摘されている廃用を予防するためのリハビリという概念を超えて、全身状態を改善し、呼吸・循環状態を良くし、活動性を高め、結果的に生命予後を延ばす。
 私も、まずは身体を起こすところから。1日3回、全然身体が動かない状態での過酷なリハビリだった。立位の保持などできるわけがない。PTに全身を支えてもらいながら、力が入らず全く動かない身体を支えようと必死だった。スタッフに励ましてもらっていたが、しんどくてしんどくて、もう横になりたいと心底思った。そんな私を見て、夫も息子もここまでリハビリをしなくてもいいのではないかと弱気になり出した。息子は娘に「お母さんがかわいそう」と言ったそうだ。しかし、娘は強い。「何言うてんの。ちょっと回復したぐらいではお母さんは絶対に納得しない。お母さんのことを思うなら、今しっかりリハビリをしないと!」と一喝したらしい。超急性期リハビリをしっかりしてもらったからこそ、今の状態がある。スタッフにも家族にも本当に感謝している。
 武田病院は早くからリハビリに取り組んできた実績があり、20年前、私が通所リハを開設した際にもお世話になった。今回PT、OT、STのベテラン達がしっかりベッドサイドにやってきてリハビリを提供してくれた。皆さん優しく嬉しかった。しかし、この超急性期リハビリで一つだけ気になったことがある。リハ室に医師がいないことだ。リハビリの最中、不整脈が出ているから、今日のリハビリはここまでにしたほうがよいとスタッフに伝えたこともあった。リハ医の不足を実感することになった。

ページの先頭へ