医師が選んだ医事紛争事例 110  PDF

最近は減ってきたのですが…
体内ガーゼ残存

(50歳代後半男性)
〈事故の概要と経過〉
 黄疸が認められたため、精査目的で他院からの紹介により入院した。検査で高度進行がんが発見された。切除不能のため、胃空腸バイパス術が実施された。創閉鎖時のガーゼカウントでその枚数が合致していた。また、創閉鎖後の腹部レントゲン撮影所見からガーゼ残存は認識されなかった。ところが4日後にCT検査で腸空内にガーゼの残存が確認された。同日に再開腹してガーゼを摘出したが、患者への後遺障害はなく、今回の事故による入院延長はなかった。
 患者側は、再開腹術を含め、医療費や慰謝料等を請求してきた。
 医療機関側の確認によると、使用したガーゼは全130枚であった。ガーゼカウントは複数のスタッフで行ったが、9時間に及ぶ手術であったために、3回スタッフが交代している間にカウント違いが起こったか、もしくは術前のカウント自体が誤っていた可能性が考えられた。また、術後レントゲン像は一人の医師が確認をしただけだった。いずれにせよ、過誤であることは明白である。患者の予後は抗がん剤の効果があったとしても1年~2年。抗がん剤の効果が認められない場合は半年未満とのことで、医療機関側は患者の状態が悪くなる前に示談を終了したいとのことだった。
 紛争発生から解決まで約1カ月間要した。
〈問題点〉
 医療機関側の主張通り過誤と判断される。長時間の手術がもたらした事故と言えるが、言い訳はできない。
〈結果〉
 医療機関側が全面的に過誤を認めて、賠償金を支払い示談した。今後はレントゲン像についても複数の医師で確認するように努めるとのことだった。

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