協会は、NPO法人京都難病連と共催で「難病医療費助成制度改善を求めるフォーラム」を11月30日に開催した。進行は吉中丈志理事。参加者は39人となった。冒頭、鈴木卓理事長があいさつ。
続いて、京都大学名誉教授の小泉昭夫氏が健康講座「実は難病は身近な病気? 子どもの難病を考える」をテーマに講演し、渡邊賢治副理事長が「難病医療費助成制度の課題」を報告した。
その後、患者が現状を訴え、当日参加いただいた福山哲郎議員(立民・参)、倉林明子議員(共・参)がそれぞれ制度の課題に言及。また、山井和則議員(無・衆)からはメッセージをいただいた。深謝申し上げる。
すべての難病患者に医療費助成を
健康講座で小泉氏は、夜泣きがひどいなどの疳の虫が強い子どもたちに着目。一部の子どもたちのナトリウムチャンネル1・9に異常があったことを京都大学のチームが解明したとし、「小児四肢疼痛発作症」と命名したことを解説。新疾患の概念が確立されたとした。また、内頚動脈の終末部位にもやもや血管が出現する病気のもやもや病にも言及。遺伝子解析によりいろいろなことがわかりつつある難病の現状を述べた。
小泉氏は現状の医療費助成制度にも触れ、もやもや病は指定難病に含まれるが、この病気の障害は突然に起こる。重症時は即時入院となることが多く、軽症者登録制度を創設して、重症時には遡って医療費助成制度を受けられる仕組みが必要だとした。また、小児四肢疼痛発作症は指定難病にはなっていない。指定難病になることで、患者はみんなで病気と闘っているという思いをもつことができ、医師は治療法の開発への情熱を掻き立てる。製薬会社は、創薬に熱心に取り組むインセンティブが働くとし、京都難病連と協会の要求である①指定難病患者の重症度分類基準の廃止②「登録者証」制度の創設③「臨床個人調査票」の負担軽減と公費負担化④すべての難病を難病法における指定難病に―の獲得が大事だと締めくくった。
次に渡邉副理事長が基調報告を行い、京都難病連と協会の要求を引き続き訴えるとともに、現在、難病患者に対する福祉サービスは多くが障害者総合支援法。このことから、より広い視点をもって、患者への支援サービスを構築するよう実態にそぐわない施策には、一つずつ意見していくと述べた。
受診抑制の実態も明らかに
続いて、フロアから難病患者が抱えている困難や改善を求めたい点が次々に訴えられた。特に、「状態もみずに歩けるからと不認定では納得できない」「軽症時のフォローが大事なのに、それが抜けている」など認定・不認定を振り分ける重症度分類への疑義が多く出された。また、患者団体が14年に行った難病患者へのアンケートでは、窓口負担上限額が1万円以上の患者は25%。難病法施行後の16年の調査では、32%。重症度分類経過措置終了後の18年の調査では、55%となっている。自己負担2千5百円だった人が5千円になったことでも負担が厳しいなどの声がある。抑制というのは数千円単位で起こるといった報告も出された。
これを受けて、福山議員は「あまりに公的支援の幅が狭すぎるという声を受けて、当時の民主党政権が難病法を創設。しかし予算の制約、公平性・安定性の問題で、助成対象とならない難病がまだまだある。重症度分類によって軽症者が対象にならないという事態も認識しており、患者、医療者とともに働きかけを行っていきたい」とした。
倉林議員は「患者は指定難病を少しでも広げたいという思いから、苦渋の決断で重症度分類を受け入れたものの、その時心配された受診抑制が起こっていることが報告された。やはり重症度分類が矛盾の元。廃止に向け議論していきたい」とした。
その他、参加者から「難病でなくても、全国には治療費の負担が重いと困っている人はたくさんいる。すべての人が心配なく医療を受けられるよう高額療養費の限度額を下げてほしい」などの声が出された。
協会はこうした患者の声を国会や厚労省に届けるとともに、医療の普遍的な患者負担の軽減を求める運動を継続していく。