“満天の星空と大草原”―モンゴル5日間の旅
妻は大連旅行を選ぶ。しかし、私は保団連の「日本陸軍731部隊の人体実験場跡の見学視察旅行」に2014年5月3日からハルピンに3泊滞在して、中国でのロシア的な雰囲気の街を少しは見聞しており食指が動かず、モンゴルの方がよいと言ったところ、表題の集団旅行に次女含め3人で申し込んだ。
ただ、この旅行では、モンゴルまでの直行便が組まれず、仁川空港での乗り換え待ち時間が長く、首都ウランバートル着陸は夜間となり、1泊目のベストウェスタン・プレミア・トゥミンホテルは、ただ宿泊しただけであった。翌日の朝、すぐ横にあるスフバートル広場を散策したが、その大きさには驚いた。人々が集まりパレードでもあれば、とてつもない催しになろうと感じられる空間的広がりを見せる。次に、バスで案内されたチベット・モンゴル仏教総本山のガンダン寺も、映画で見たチベット寺院の様式で美しく、建物も寺庭に立つ一対の仏像もとてつもなく大きく、立体的な広がりが印象的であった。しかし、訪れる人の疎らさからくる静寂さに、一抹のさみしささえ漂ってくる。ちなみに、モンゴルは国土約156万km2と日本の4倍もあるが、人口は約306万人(人口密度1・9人/km2)と少ない。
2泊目のリゾートワールド・テレルジホテルは、ウランバートルの東北東50㎞、国立公園内にあり、さえぎるもののない広々とした草原の中の道を進みながら、低い丘の間を通ってたどり着く。途中の丘に登りかなたの方を見渡せば、四方の山の端に囲まれ広大なる草原が眼下をゆったりと続いて行く。鷹狩りでの狩猟生活もなされ、素人に鷹持ちをさせる鷹匠の商売もあり、鷹を手に支え持つと結構重いと判る(写真①)。しかし、この重さとは何か? 人類がこの人口密度の低い土地で、食料を得て生活を維持し、生存を続けて一族を発展させ、過去から未来への営みをいかによりよく継続できるのか、その困難さに耐えその重さに抗して自分も人類の一人としてどのようにこの腕を上げ続けるのがよかろうか? また進むと、天然・自然の奇しき営み、造化の権化なる亀石が目の前に現れた。高さ15m・幅15m・長さ30mの亀の形をした石のオボー(信仰の対象)に、見るだけで圧倒される(写真②)。
テレルジホテルは、美術的に工夫が施された美しいホテルであったが、細かい設備の不具合があった。職員の準備不足でモンゴル料理になかなかありつけず、各グループのガイドまで怒り出す不人気の様子は残念であった。その夜は、真っ暗な丘の上に車に揺られて移動し、漆黒の夜の暗さの中で各星座や天の川の輝く満天の星空を楽しめ大満足であった。
次の日は、ホテルを出て遊牧民のゲル(テントの家)を訪ね、馬乳酒やチーズをふるまわれ、民族衣装を着て記念写真を撮り、乗馬の体験をした。明るく澄み渡る空の下で歩を進め、しかし、慣れぬ馬の背ではなかなか快適とは行かなかった。午後は、ジンギスカーンの大乗馬像に登り、またテレルジホテルに戻って1泊した。
現地最終日には、ウランバートルに戻り、ダンバダルジャー日本人抑留者慰霊公園に弔問し、モンゴルの民族楽器演歌舞踊を満喫し、ザイサンの丘記念碑を見て首都を一望し、帰国の途に就いた。無事関空に着陸でき何よりであった。
(写真①)鷹匠の気分満喫
(写真②)亀石を背景に妻と娘と記念撮影