医療メディエータの心得伝授 紛争対応の心構えの一助に
協会は11月5日に舞鶴共済病院医療管理課長の南達也氏を講師に迎えて「医療メディエータとしての経験〜コミュニケーションの裏側〜」のテーマで医療安全担当者交流会を開催した。出席は32人。
まず南氏は、医療メディエーションの歴史を解説。1970年にイギリスでスタートし、日本では05年から研修が始まった。メディエータは、患者側と医療者側(病院側)のどちらにも偏らない「やじろべえ」のような不偏性の立場で、双方の対話を促進し、相互の情報共有を深め、誤解や疑問が起こらないよう調整支援するのが役割となる。
患者さんに寄り添い、しっかり気持ちを受け止め、病院側との調整を図れば、これまで弱い立場だと思っていた患者さん側にとっても心強い存在になることができる。
一方、担当者としては、何よりも自分が疲弊しない。メディエータの役割は事象の解決ではなく、双方の関係構築であり、事案の中心に立たず、客観的に見ることができるとした。
そして、メディエータの心得として次の4点を挙げた。
(1)自分自身の見解や評価、判断は示さない(2)メディエータが双方に代わって説明をしない(3)提案しない(4)解決しようとしてはいけない—だが、意識していても実際には「病院の職員」が出てしまう。また賠償に関しての紛争解決には関与しない。具体的な判例や法的な対応を尺度に考えてしまうこともいけないと自戒を込めて話した。
医療メディエータの認定は、医療機関のスタッフに限定されている。それは、弁護士法で、弁護士以外の者が法律業務に従事することを禁じているため、院外の者が医事紛争に関わると弁護士法72条に抵触する恐れがある。院内のスタッフが、医療メディエータとして支援する場合は、示談交渉の一変型ということでこの法律には抵触しないという見解になっている。
面談はもちろん、電話でのやりとりも含めて必ず記録しておく。自分の発言も、相手の言葉・表現も、感じた雰囲気もだ。これらは、将来的に証拠として残すことにもなる。記録の目的は「義務」としてではなく「対話」を進めるために利用する。
南氏は手書きでその場で記録し、更に後からその時の情報を追記する。感じたことや気になったことを後で書き加えることで新しい発見や問題点が見つかることがある。過去の記録と比べて相手方の背景や気持ちの変化を読み取ることができる。文字にすることでクリアになることは多い。
電話対応も、前回の会話記録を参考に「この間は、○○と言っておられましたが、その後どうですか?」と継続した会話を持つようにする。相手方は忘れていても、こちらはほったらかしにはしていませんよ」というメッセージを発信することが重要と述べた。
南氏の解説の後、参加者から質問や意見が活発に述べられ、交流を深めた。