TPP説明会で懸念払拭に躍起 政府の姿勢に疑念相次ぐ
TPP(環太平洋連携協定)の「大筋合意」が発表されて1カ月。徐々にその内容が明らかになってくる中、政府による「TPP協定交渉の大筋合意に関する説明会」が11月4日に大阪で開催された。約1000人が会場を埋めた。
非関税分野について説明した内閣官房の担当者は、10月5日に公表された概要文書をもとに、食の安全や国民皆保険など国民の関心が高い課題について以下のような説明を行った。
最も懸念の強い「投資」でのISDS(投資家と国との紛争の解決)条項については、「濫訴抑制につながる規定が置かれ」「正当な公共目的等に基づく規制措置を採用することが妨げられない」と説明。
皆保険に関しては、「国境を越えるサービスの貿易」で、日本は「社会事業サービス(保健、社会保障、社会保険等)、(中略)について包括的な留保を行っている」からその分野にラチェット条項は(逆進防止条項)適用されず、「皆保険は脅かされない」とした。
さらに「金融サービス」における自由化は、「公的年金計画または社会保障に係る法律上の制度の一部を形成する活動・サービス(公的医療保険を含む)、締約国の勘定、保証または財源を利用して行われる活動・サービスには適用されない」となっているので、「社会保険が民営化を迫られることにならない」と説明した。
また食の安全に関しては、「衛生植物検疫(SPS)措置」において、検疫や遺伝子組み換え食品の扱いを含めて日本の制度変更はなく、「脅かされることはない」とした。
これに対し、会場からは判断できる情報が十分でないなどと、疑念の声が相次いだ。「協定全文が公開されない中で、本当に大丈夫といえるのか」「付属文書も含めて市民に早く公開してほしい」との声に対し、情報公開が不十分だと認めた上で、できるだけ早く公開できるようにしたいと答えるにとどまった。
英文で協定案公表
翌5日に参加12カ国による協定暫定案文がニュージーランド政府のホームページに英文で公表された。本文と付属文書合わせて1500ページに及ぶものだが、日本政府が作成して同日に公表した本文の概要は97ページでしかない。今後、全文の内容を精査した上で、国会における本質的な徹底追及が不可欠だ。
なお、協会などでつくるTPP参加反対京都ネットワークは、TPPウォッチャーの第一人者である内田聖子氏を招いて12月1日に講演会を開催する。