原発事故で小児がん多発 県民健康調査の分析で結論
京都工芸繊維大学名誉教授の宗川吉汪氏、および同大学教授の大倉弘之氏が、8月31日発表の福島県県民健康調査のデータを統計的に分析し、事故以降の小児甲状腺がん発症が原発事故によるものという推測を裏付ける結果を得たと発表した。協会の環境対策委員会は、論文をまとめた宗川氏を講師に内部学習会を開催した。
県民健康調査では、ほぼ同一の集団に対して先行検査と本格検査を行っている。先行検査は6月30日時点で終了しているが、本格検査は2014年度から25市町村で実施。15年度からは残りの34市町村で実施されている状況だ。宗川氏は先行検査も同様の25市町村の結果を抽出し甲状腺がん発症の患者数を統計的に推計。比較したと解説した。
結果、10万人当たりの推定患者数は、先行検査で72・9人〜110・8人、本格検査で105・3人〜239・6人となった。対象者のがんが見つかるまでの平均期間を、先行検査で9・5年、本格検査で2・975年として、それぞれ10万人・1年間当りのがん発生率を求めると、先行検査で7・7人〜11・7人、本格検査で35・4人〜80・5人となった。
10万人・1年当たりの発生数として、先行検査で11・7人、本格検査で35・4人を採用して比較すると、統計的に95%の信頼率で発生頻度の比が11・7:35・4となり、本格検査の方が先行検査に比べて3・03倍高くなった。この結果から、宗川氏は原発事故が小児甲状腺がん発症の原因になっていると述べた。ちなみに、福島第一原発事故後に発生した小児甲状腺がんの67%以上は原発事故によることになる。事故後に発生した小児甲状腺がんは放射線被ばくによるものと認定するのが妥当で、その補償が求められると訴えた。