新専門医の仕組みで地域説明会開く
国の関与は限定的と強調
一般社団法人日本専門医機構は「新たな専門医の仕組みに関する地域説明会」を各地で行っており、9月23日に京都・滋賀・奈良の関係者を対象としてキャンパスプラザ京都で開催された。当日は、厚生労働省医政局医事課長の渡辺真俊氏のあいさつに続き、同機構から新制度の仕組み等に関して説明が行われた。
総合診療専門医の指導医は自薦も
新たな専門医制度の仕組みについて説明した同機構理事の千田彰一氏は、改革の骨子について、(1)専門医の医師像を明示して国民にわかるようにし、基本領域とサブスペシャルティ領域の2段階制とする(2)学会認定から機構認定の専門医へ(3)2015年春の卒業生から診療に従事しようとする医師は、19基本診療領域のいずれか一つの専門医資格を取得—とし、(3)は「マストである」と念押しした。さらに地域医療を守る視点から、十分配慮した研修体制を構築し、「今以上に崩壊させることがない」ようにすることを強調した。
指導医については、専門医は必然的に指導医となるもので機構が認定するのではないとし、要件は専門医の1回更新と講習会などの受講だとした。新設される総合診療専門医の指導医については、六つの候補をあげており、そのうちの一つ「都道府県医師会ないし郡市医師会から六つのコアコンピテンシーを実践している医師として推薦された医師」は「自薦」もありだとした。
この1年の機構の議論は基本領域が中心だったため、サブスペシャルティ領域の認定は基本領域と比較的密な関係にある29の専門科のみ。これからこの領域の議論を進めていくとした。
更新の議論は急ピッチに
専門医の認定と更新について専門医認定・更新部門委員長の水谷修紀氏は、更新基準は、▽勤務実態の自己申告(直近1年間の実態)▽診療実績の証明▽更新単位の取得—の3項目と説明。このうち診療実績の証明については、(A)(外科領域におけるような手術実績の)登録等による場合、(B)症例一覧の提示による場合、(C)自己学習を促進するとともに適切な診療能力の有無の判定を目的とした筆記試験等を行う場合—のいずれかの方法から選択で、それは領域の考えを尊重するとした。
妊娠、出産など特別な事情で更新できないときは、一つは一定期間の活動を全く休止する宣言をし、その期間を除く5年間で基準を満たす対応。もう一つは前項のCを追加して不足分を補ってもらう対応があるとした。
また、ベテラン専門医への対応についても、専門医を連続して仮に4回更新していれば、次の更新から診療実績の証明を免除し、領域別講習等で補う方法を選択可能とする。何回目の更新からにするかは領域の判断を尊重するとした。
更新基準については現在9基本領域で確定しており、そのうち産婦人科、病理、形成外科は15年度から開始する予定だと説明した。
関係者による協議が重要
地域における関係者役割について説明した同理事の小森貴氏(日本医師会常任理事)は、新たな専門医の仕組みはプロフェッショナル・オートノミー(専門家による自律性)を基盤として設計されるべき。国の関与は、養成プログラム作成とデータベース構築に対する支援の二つのみで、それ以上のものではないと強調。一方で、都道府県、大学、医師会等の協議・関与が、研修病院設定や専門医の養成プログラム作成、キャリア形成支援、データベース構築にとって重要であるとした。
質疑応答では不明な点について多くの質問が出された。機構認定の専門医を取得するインセンティブについての質問に、千田氏は直接的な議論はしていないとしながらも、難病指定医は専門医に限ることや、施設基準で要件になっているところもある。今回、公に認定され、それを社会に開示できることも一つの意義とした。小森氏は、「機構が認定する専門医を広告可能」とするとされており、いずれ実施される。また専門医の評価について、国民の理解と医療者の合意が進んだ先のこととしながらその可能性を否定しなかった。
当日の資料は厚労省HPで閲覧できる(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000100941.html)。