保団連 病院・有床診セミナーを京都で開く
入院医療軸に事故調からマイナンバーまで
保団連は9月26・27の両日、病院・有床診療所セミナーを京都市で開催。昨年度の同セミナーの出席を上回る、25協会、106人が出席した。開催に際しては、京都協会が企画の段階から全面的に協力。京都協会副理事長が登壇、講師を務めた。
保団連の医療守る取組を紹介
冒頭、安藤元博保団連病院・有床診対策部長が「入院医療をめぐる動きと対策」と題して基調報告。政府が医療保険制度改革関連法等次々と国会で可決し、社会保障に対する責任を放棄している状況等を報告した上で、保団連の国民医療を守るさまざまな取組みを紹介した。
講演では岡崎教授が非営利HD法人に警鐘
記念講演では、岡崎祐司仏教大学社会福祉学部教授が、「新段階の医療費抑制策と提供体制の改変 地域医療構想と地域医療連携法人にどのように対処すべきか」を講演。安倍政権の医療改革の具体的手法を解説し、病院の機能・病床数、診療所の役割・機能を再編し、医療提供体制を改変する装置としての法人形態=非営利ホールディングカンパニー型法人の危険性を訴えた。
開始直前の事故調への留意点も
医療事故調査制度実施直前セミナーでは、まず保団連病院対策事務局小委員が医療事故調査制度の概要を紹介した。その上で、医師でもある大阪弁護士会の長谷部圭司氏が、「医療事故調査制度の留意点」を解説。(1)個人責任追及の可能性(2)黙秘権侵害(3)外部委員・第三者機関の危険性 の3点がとりわけ本制度の問題と指摘し、注意を促した。
京都の実績踏まえ紛争事例を紹介
病院分科会では、まず「医事紛争事例ケーススタディ」と題して京都協会の林一資副理事長が登壇。医事紛争になった場合に医師を守るのはカルテ記載とした上で、これまでの京都協会の医事紛争に対する取組み内容や豊富な実績を具体的事例を交え紹介。紛争を少なくするには患者・家族に対し十分なインフォームドコンセントとカルテ記載等が重要と締めくくった。
マイナンバーの真の目的は名寄せ・特定化と指摘
続いて京都協会の鈴木卓副理事長が「マイナンバー制度を考える・医療をめぐる個人情報を中心に」を講演。政府・厚労省における検討の経過を丹念に追い、その流れを明確に解説。医療情報は特別に機微性の高い情報だが、最も利用価値があると考えられており、企業やデータ・ブローカーが持つ個人情報とデータ・マッチングされると、予期せぬ個人の特定につながる可能性がある。この名寄せ・特定化こそが真の目的と指摘した。
有床診が継続し地域貢献できる報酬体系が必要と訴え
有床診療所分科会では、シンポジウム「どうして地域から有床診療所が消えたのか。地域に必要な有床診療所を存続、発展させる道は何か」を開催。安藤部長を座長に、京都協会の渡邉賢治副理事長ら4人の演者が、それぞれの有床診の特色や取組みを紹介した。
このうち渡邉副理事長は「有床診療所の継承問題」と題して報告。京都府内の有床診療所を対象とした医業継承アンケートの結果を解説。今後の継承予定については6割が「決まっていない」等とした上で、自院の実情を交えながら、肛門科に専門特化できるのは地域に他の医療資源があるからこそ。しかし、有床診療所入院基本料の底上げなくしては、有床診療所が継続し地域に貢献し続けることはできないなどと訴えた。