15年度医療安全シンポジウム開く
医療安全対策55周年記念として、協会は9月12日、京都市内のホテルで「医事紛争を知る どこでも起こり得る事例検討」と題して医療安全シンポジウムを開催した。会員や会員医療機関の従事者ら85人が参加、4人のパネリストの話題提供の後、熱心に討論・意見交換した。
事故調の制度を解説
シンポでは、実際に紛争解決に携わっている協会の担当理事・委員がパネリストとなって、「医事紛争事例集 医師が選んだ55事例」に掲載された事例を紹介・解説するとともに、各専門科領域に限らず問題提起をした。パネリストは、外科の林一資副理事長、内科の砺波博一理事、整形外科の宇田憲司理事、産婦人科の貫戸幸彦調査委員の4氏。
林副理事長は冒頭、協会運営の「医師賠償責任保険処理室会」の紛争対応の流れを紹介した後に、京都における最近の医事紛争傾向と、話題となっている医療事故調査制度について解説をした。
各科の実例
各パネリストからの報告では、引き続き林副理事長が、外科の事例として内視鏡の消化器官穿孔事例と虫垂炎に関する事例を紹介。大腸スコープによる偶発症は極めて小さい確率で、かつ減少傾向が認められるが、全国的にみて毎年発生しており、中でも穿孔事例が最も多いことをデータで示しながら解説。京都で実際に発生した内視鏡穿孔事故を数例紹介して、患者側・医療機関側双方の主張を述べた後に、紛争事例の中でも、この内視鏡穿孔事例は、手技に問題があるのか不可抗力なのか、過誤の存在の判断が極めて困難である現状を訴えた。さらに虫垂炎については、患者側は当然ながら、消化器系以外の医師でさえ、時に油断してしまう傾向があるが、腹膜炎で患者生命に関わる場合もあることを強調した。
内科の砺波理事は、解説した事例の中で医療過誤が認められない場合でも、いったん紛争となれば注意深く患者の状態を観察して、必要に応じて検査を薦める等、医師としての療養指導の重要性を説いた。
宇田理事は整形外科の典型的な事例として、点滴による神経損傷疑いなどは、穿刺部位の選択、穿刺方法について注意を促すとともに、(無過失)補償と賠償の違いについて解説した。関節注射による感染では、その注意義務について判例を参考にして、消毒に関する注意を促した。MRSA感染では、院内感染における注意事項を具体的に述べた。
産婦人科の貫戸調査委員は、産婦人科領域は、内科や外科等に比較すれば紛争数は少ないが、紛争発生時には深刻な事故の場合も多く、解決までに非常に困難な経過を辿る可能性が高いことを注意喚起した。
質疑応答では、不妊治療等、専門的な質問から、診療に非協力的な患者に関する投薬の問題、賠償金額の算定根拠等、多岐にわたり活発に討議された。
詳細は冊子でお届け予定
シンポの詳細は、1970年から2014年にわたる45年分の統計データの紹介・評価とともに、医療安全対策55周年記念特集として冊子にまとめ、11月末に全会員に発送予定だ。