新専門医制度と総合診療専門医の懸念多く 第2回開業医フォーラムで議論
協会は「新専門医制度と総合診療専門医—総合診療専門医とは何か—」をテーマに、第2回開業医フォーラムを8月9日に開催した。医師29人が出席し、意見交換した。開会にあたり垣田さち子理事長は、新専門医制度を通じて開業医を中心に担ってきた地域医療の姿が大きく転換されようとしている。来年10月京都で開催する保団連医療研究フォーラムに向けて我々の側からの検討を進めたいとあいさつを行った。開業医フォーラム(1面に予定)で更に議論を深めていきたいので会員にご参加いただきたい。
フォーラムでは、岡所明良会員(与謝)の司会で、吉中丈志理事から新専門医制度と総合診療専門医について、明らかな点を情報提供し、今後懸念される問題について報告した。
管理統制などの強化?—新専門医制度
新専門医制度に関して懸念される問題としては、▽偏在解消を口実に定数規制や自由開業医制の規制につながらないか▽診療実績を問うことで資格維持のために、人口集積地の大病院集約化と過疎地域での診療維持が難しくならないか、さらに事実上の定年制とならないか▽領域別に過度に特化した専門医をつくり、専門外や複合的な症状に対応できなくなる懸念はないか。むしろ臨床研修制度でプライマリ・ケアを学ぶ機会を増やす方が肝要ではないか▽専門医が大学や大病院に集約化されて大学病院を頂点とした系列化が強まらないか▽全体として医師に対する管理統制とコントロールの強化につながるのではないか—と提起。
国の思惑と現場の期待—総合診療専門医
総合診療専門医に関しては、▽一体改革の提供体制改革の中で「地域医療の核」と位置付けられているが、「緩やかなゲートキーパー機能」と総合診療医がつながって、フリーアクセスの縮小解釈から制限につながらないか▽厚労省「保健医療2035」の打ち出した「保険医の配置・定数の設定や、自由開業・自由標榜の見直し」「適正配置」が、ゲートオープナー機能をもつ総合診療医のすべての地域への配置とリンクされないか▽同報告にある総合診療医(かかりつけ医)への包括的評価と、他の医療機関との診療報酬上の差別化が想定されていないか▽その先に英国のような人頭払い制を想定していないか▽養成数は数万人とも1万2000人とも言われているがその開きはどこからくるのか▽横倉日医会長の「あくまで学問体系の裏付けとしての専門医であり、医療提供体制とは全く別物であるという位置付け」との評価・方針をどう考えるか▽大学病院等の「総合診療科」と総合診療専門医との関係は別物との見方も示されている。一方で、地域の中小病院が期待する役割はどうなっていくのか—と提起した。
疑問や懸念の声が続出
意見交換では、手術実績など更新要件を考えれば外科専門医の開業がなくなるのではないかといった懸念や、総合診療専門医が地域でゲートキーパーの役割を担うのなら、適正配置と結びつけられざるを得ないといった不安の声が出された。また、日医会長の「医療提供体制とは全く別物」との発言は、国の位置づけとは全く逆ではないかとの疑問もあがり、新制度は何の専門医も持たず、あらゆる領域に対応して地域の健康を守ってきた医師の思いを汲むようなものとなっているのか、などの声が相次いだ。
また、専門医制度は質を高めるという意味では大切だが、養成側の都合で人数や配置を決めたり、専門医の強制や管理、診療報酬等による差別などは問題であるとの焦点を明確にすべきとする意見が出された。一方で、良い制度とするために現場の医師の側から、次の時代のかかりつけ医を自分たちが育てるつもりでアプローチすべきとの意見もあった。
議論を受けて協会は、医師制度の大転換であることからしっかり注視して、問題点を発信し医師・患者双方に真に資する制度となるよう貢献したいと締めくくった。