主張/総合診療専門医が僻地医療の切り札となりうるのか
2020年度から新専門医が認定される。
真に専門医の質が保証され、意義のある更新制度ができるのであれば有り難い。現在専門医資格を取らず活動している医師も希望すれば資格を取得し、更新できる制度にすべきである。
しかし、資格取得より臨床を優先する医師も多い。同じ仕事をしているなら、専門医と非専門医に制度上、差があってはいけない。選択は患者に任せるべきである。
基本領域専門医に「総合診療専門医」が新たに加わったが、僅か3年の研修で大丈夫なのか? 筆者は僻地診療や専門医としての病院勤務を経て、旧郡部の病院のない町で父の診療所を継承開業して10年少々経つが、いまだに驚きと勉強の毎日である。総合診療専門医を僻地医療対策の切り札と考えているようだが、僻地医療を軽視している。都市部と異なり、医療を含め社会資源を提供される機会が少なかった僻地は、様々な問題を抱えている。大きな“異常”を抱えていても当たり前と思い“元気”に生活して“ピンピンコロリ”を地でいく方も多い。医師になって5年程度の(強制配置された)総合診療専門医が対応できるのか。
2013年日本学術会議が全員加盟制医師組織「日本医師機構(仮称)」設立を提唱した。「医師の免許権限は従前通り厚生労働大臣が保持するが、日本の医師は、医業をなすために、日本医師機構に登録しなければならない」としている。日本専門医機構は2014年専門医制度整備指針(第1版)で「初期臨床研修を修了した後、医師は19基本診療領域のいずれかの専門医資格を取得することが求められる」としている。
今後、医師国家試験の合格者の大半は、専門医資格取得のために日本専門医機構に所属する。日本医師機構の設立は容易になる。注視していく必要がある。
専門医の数と配置が財政政策として管理され、「家庭医」として配置された総合診療専門医への受診が、政策で誘導されれば、総合診療専門医はゲートオープナーではなくゲートキーパーとなり、患者が希望する医療へのアクセスの障害になる。更に専門医のみならず、保険医の定数管理も加われば、都市部でも医療供給不足となり、健康寿命が過ぎればコロリといく社会がくるであろう。