地域の医療費総額を診療報酬で調整検討へ「保健医療2035」策定懇談会が提言  PDF

地域の医療費総額を診療報酬で調整検討へ「保健医療2035」策定懇談会が提言

 厚生労働省の有識者懇談会である「保健医療2035」策定懇談会が、6月8日に医療費抑制を目的とした対策の提言案を取りまとめた。
 提言案は、団塊ジュニア世代が65歳に達し始める35年までの中長期的な健康対策や、医療制度の将来像を示したもの。人口構成などをもとに医療費総額を地域ごとに算定し、総額を上回った場合は、地域全体の医療機関に支払う診療報酬を引き下げる仕組の導入や、医師の偏在が続く地域における保険医の配置・定数の設定、かぜなどの軽い症状では患者の自己負担割合を高くすることなどを提言している。
 また、地域のかかりつけ医の「ゲートオープナー」機能を確立するとして、今後10年間ですべての地域に総合的に診療を行う医師を配置し、このかかりつけ医に受診した場合は、他の医療機関よりも患者負担を軽くするとしている。これは、総合診療専門医を視野に入れたものと考えられる。
 さらに、公的医療保険の機能・役割について、国の公的医療保険を土台に、地域の職域保険が選択的に提供できるサービスを追加できるようにし、その一部を保険範囲外とする。また、重症度・救命度が低く費用対効果の低いサービスの一部を保険外範囲外とし、これら保険範囲外のサービスを患者が利用するときに使える金融サービス・寄付基金などの仕組みを作ることまで提言している。
 成長戦略を意識した記述も散見される。保険医療のグローバル展開を推進することを目標に、診断・治療提供だけでなく、保険医療の制度設計や運用を含む地域包括ケアシステム、つまり地域単位での医療・介護システムの輸出にも言及している。
 これを受けて、厚労省は関係団体から広く意見を聴取するとともに、省内に推進本部を設置し、財務省などとの調整を進める方針だ。
 ついに、国民皆保険解体が本格的に始動することになる。協会はこの動きに注視するとともに、早急に見解等を取りまとめ厚労省および京都府との懇談を設置し、意見を述べていきたい。

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