医界寸評
先日、元厚労官僚の講演を聞く機会があった。立場上、厚労省と距離を置いているが、大学教授として企業や自治体と積極的に連携活動されている。講演では、地方圏での地域包括ケアは、互いの顔が見える関係もあり、有効に機能している事例も多いが、地代・人件費の高い大都市圏での対策が今課題になっていると話された▼大都市圏では、地域包括ケアが機能するエリアへの集住、つまり不動産売却による住み替えや、サ高住への転居が推進されていく。地域包括ケアシステムは、住み慣れた地域での生活を援助するシステムではなく、地域包括ケア提供地域への移住が前提になるシステムになる▼医療では、川上の入院から通院・在宅へと流されたが、介護が必要になると、地域包括ケアでは、自宅からサ高住へ流されていく。流されたくなければ自己責任での対応になる。流れに乗れないと、遊水地に取り残され干上がってしまう。山間僻地の住民や貧乏人は、住み替えのための資産もなく、流れに乗れないので孤立死するしかない▼地域包括ケアの機能する地区に住むか否か、選択する時代になってきた。自由に居住地を選ぶ上級国民、ホールデイングカンパニーの地域包括ケア提供地区に住む普通国民、住みたくても住めない下級国民の住む日本。地方創生もこのような日本を創るのだろうか?(恭仁)