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私のすすめるBOOK

「沈みゆく大国アメリカ」堤 未果著/集英社新書(本体720円+税)

アメリカの驚くべき医療実態 皆保険の重要性をあらためて痛感

 堤さんの本がラジオで週間ベストセラーとして紹介されていて、早速読んでびっくりした。アメリカの公的医療保険は65歳以上の高齢者と障害者・末期腎疾患患者のためのメディケアと最低所得層のためのメディケイドがあり、メディケイドの財政は国と州が折半している。ほとんどの国民は、民間保険が高いために適用範囲の限定された安い保険を買うか、5千万人といわれる無保険者になるしかない。重症になるとERに駆け込むだけであった。
 2014年から完全施行されたアメリカの皆保険制度「オバマケア」。全国民の保険の加入を義務化して、予防医療を含む10項目を保険の必須条件に入れ、個人年間負担額の上限を導入した。保険会社は、今までのように持病を理由にした加入拒否、病気になってからの一方的な解約ができなくなった。国民は新しい保険を購入して、月々の保険料や適用範囲など自分に合ったプランを買う。しかし、これはアメリカ国民が待ち望んだ国民皆保険制度なのか?
 筆者は、日本の医療は生存権に基づく社会保障の一環として行われるが、アメリカの医療は「ビジネス」だと喝破する。例えば、夫婦二人で毎月の保険料600ドル。免責額が6000ドルとすると、最初の6000ドルまでの医療費は100%自己負担で、払い終わってから保険金の支払いが始まる。また、薬代の40%は自己負担である。薬の高い米国では大きい額になる。がん患者になると2500ドル以上請求される。
 所得が低く、保険料の払えない人には収入に応じて一定額の補助金が支給されるが、保険を持たない場合には罰金を支払わなければならない。リーマンショック以後、個人破産者の半数以上が医療破産であり、150万人にのぼる。そして、その8割を保険加入者が占めているというから驚きだ。
 病院の株式会社参入が進めば、必ず公的保険適用範囲の縮小と混合診療がやってくる。たとえ国民皆保険が制度として残っても、使える範囲がどんどん狭くなり形骸化すれば患者負担が重くなってくる。そこで、民間保険のビジネスチャンスが生まれる。これをアメリカの投資家は狙っているし、日本の政治家も考えていると思われる。皆さん、この本を読んで日本の皆保険制度を守りましょう。
(下京東部・波柴忠利)

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