憲法を考えるために(48)  PDF

憲法を考えるために(48)

 
違憲・特定秘密保護法
 
 2014年7月24日、国連自由権規約委員会は日本政府に対し、「特定秘密保護法」への勧告を出した。勧告は同法が秘密事項の定義が曖昧で、報道関係者や人権擁護活動家に深刻な影響を及ぼしうる重罪を科していることを懸念し、国連自由権規約・表現の自由の基準を満たすよう、秘密の定義を狭め、国家の安全を害しない公益を目指した情報を流布した個人が刑罰を受けないようにすることを勧告するとしている。 
 これは憲法21条「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」に事実上違反するものであることを指摘している。
 これ 一つを取り上げても、特定秘密保護法は基本的人権を侵害し、違憲であることは明らかであろう(違憲はこの法にもとずく具体的な人権侵害が発生した疑いがあり、それに対して裁判所が違憲判決を下したときに確定する)。 
 特定秘密保護法は、集団的自衛権の行使容認、武器輸出解禁など一連の流れの一つとして制定され、主に米国(軍)との安全保障(軍事)上の情報連携における公務員や民間事業者からの情報漏洩防止を目的とする。
 しかし、関係省庁の長が秘密指定の権限を持ち、それに対して監視機構は設置されず、国会にもその指定を解除する権限がないなど、関係省庁の秘密事項の恣意的な拡大、政権の恣意的な運用が可能な法律である。
 例えば、市民生活の安全に関わる情報—原発事故、被曝、感染症情報などを安全保障などの理由で秘匿したまま市民生活を規制することなどが可能となり、国民の知る権利の侵害、さらには生存権の侵 害に発展しかねない。そしてこの法律はこれらにとどまらず広く憲法が保障する人権、自由を制限する恐れが強く、国民生活全般を監視、規制する運用が可能になり得る。 
 また医師にとって、特定秘密を扱う公務員などに対して行われる「適性評価」は、その精神疾患に関する調査事項と秘密を扱う適格性との間に何ら因果関係がなく、精神疾患の患者への差別意識を助長しかねないばかりか、患者・医師間の信頼関係をも大きく損なうものである。また医療者側が当局に提供した情報が、公安目的で利用される懸念も残る。
(理事 飯田哲夫)

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