医療事故調の根幹となる議論始まる 厚労省の「医療事故調査制度の施行に係る検討会」で
医療事故調査制度は、医療事故の原因究明と再発防止を目的として、2014年6月に成立した医療介護総合確保法における改正医療法で枠組だけが規定され15年10月からの施行が決まっている。医療機関で予期せぬ死亡事故が発生した場合、医療機関は遺族に説明するとともに、医療事故調査・支援センター(第三者機関)に報告、さらに院内調査を実施し、結果を遺族や同センターに説明せねばならないとされている。
しかし、予期せぬ死亡事故の定義、センターへの報告内容など、その具体的な運用や解剖施設の手配、費用面など、現場からの多くの疑問には、今後示されるガイドラインや省令・通知によるとされてきた。これらは、11月14日に開催された厚生労働省の「医療事故調査制度の施行に係る検討会」で具体的に検討が始まった。医療機関の全てが対象となるだけに、特に医師個人への責任追及がなされないよう注目が必要である。本紙を通じ、報道や当日資料に依拠して検討会の状況を報告していきたい。
関連省令・運用通知の議論を開始
検討会では、15年10月1日施行の医療事故調査制度に関する省令や大臣告示等の策定のための検討を進める。今後、月2回程度のペースで開催し、来年2月末まで意見集約、3月に省令、告示、通知へのパブリックコメントを実施し、4月を目途に公布される。
報道によると、第1回検討会では、診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究班の中間報告書の内容や、日本医療法人協会がまとめた「現場からの医療事故調ガイドライン検討委員会最終報告書」※(10月4日)の概要が説明された。医法協の報告書は、現場に受け入れられない制度は成功しないとの趣旨からまとめられている。
同日の会合では、医療事故の報告は医療法上(6条の10)の管理者の義務であり、当該義務に基づき報告されると厚労省は説明した。対象となる医療事故の「定義」を巡っては、「医療過誤」や「管理に起因する事故」が対象になるのかについて複数の意見が出た。これに対し、厚労省が法規定を引用し「過誤や管理などの文言は法文に入っていない。単なる管理は含まれないが、医療と管理は重なり、医療の中にある管理は対象になる」と説明した上で「何が具体的に含まれるかは、本検討会で議論いただきたい」とした。
第2回では事故の定義等で議論
11月26日開催の第2回検討会も、報道では医療事故調査制度の運用に向けた省令・通知に盛り込む内容に関する論点が提示された。議論では、医療事故の定義、医療事故発生時の医療事故調査センターへの報告内容や報告時期、院内調査の過程で得られた内部資料の扱いなどが焦点となった。
ここでは、事故発生のセンターへの報告内容の一つとして「事故の内容に関する情報」を明記しているが、構成員から「直後では具体的な情報が少なく、調査後に時間を経過して分かることもある」として報告不要とする意見や「分かる範囲で報告すべき」との意見もあった。
また、調査結果のセンターへの報告に関する院内調査での内部資料の扱いについても、厚労省の論点案では「外部に公表、開示しない」としている。構成員から「『外部』にはセンターも含まれるのか」との指摘があり、厚労省医政局総務課長は「院内調査の段階ではセンターも含めて開示しないが、センターによる調査の段階では医療機関に対して協力を求めることはできる」と説明したとされている。今後、議論が分かれている論点について、詳細な検討を進める方針だ。
現場の意見反映を
医療事故調査制度の創設は、「原因究明」と「再発防止策」につながることが期待される。しかし、調査報告書が裁判の資料として医師個人の責任追及に使われる懸念はいまだ拭えない。報告者の非懲罰性が確保されるのか、私たち現場の意見が十分反映されるものになるのか、協会は引き続き議論を注視したい。
※日本医療法人協会が「あるべき医療事故調査制度の姿」をガイドラインとしてまとめたもの。医法協のホームページで公開されている。(http://ajhc.or.jp/)