私のすすめるBOOKS 安倍政権を考える3冊
予想外の争点ぼかしの総選挙が仕掛けられた。そこで急遽、最近読んだ安倍政権を評価する視点として示唆に富む3冊をご紹介したい。何れも容易に手に入る新書本である。
■富岡幸雄「税金を払わない巨大企業」(文春新書)
消費税増税が国民生活を圧迫し始めた。景気の冷え込みを見越した安倍政権は2年に渡り5・5兆円の経済対策費をつぎ込んだ。大胆な金融緩和も連発した。それでもなお、景気回復の実感が現れていない。庶民が苦しんでいる裏で大企業は様々な手口で課税逃れを行っている。証券・銀行系ホールディングカンパニー、IT大手がその筆頭に居る。本書の指摘以外にも輸出企業には還付金が入り更なる内部留保金を積み上げている。グロバリゼーションを錦の御旗に自己の利益追求にのみ汲々とする売国的企業・経営者群が居る。安倍首相は彼らを利する景気対策にのみ執心で、「他に打つ手はない」と開き直っている。
■古賀茂明「国家の暴走〜安倍政権の世論操作術〜」(角川ONEテーマ21)
消費増税延期・アベノミクスを選挙争点としたい安倍首相であるが、その裏で既に集団的自衛権・特定秘密保護法の運用体制が着々と進行している。原発や防衛整備輸出の「成長戦略」とも一体化している。消費税再増税は経済条項が法律にも書き込まれており敢えて総選挙を行う根拠にはならない。逆に集団的自衛権の問題はこれまでの憲法解釈を大きく変えるものであり、これこそ国民の信を問うべき重大案件である。首相は争点隠しに躍起になっているが、本書を読んで国民の側から総選挙の争点にしていくべきであろう。
■服部茂幸「アベノミクスの終焉」(岩波新書)
安倍首相は様々な経済指標を用いてアベノミクスが成功しているとしている。株価は上がったが金融緩和や年金基金の運用が株式投資に向かっているだけで、多くの国民には無縁である。株価以外で好転した指標の多くは民主党政権時代から安倍政権初期、すなわちアベノミクスとは無関係に改善してきていた。本書は首相がその成果を横取りしていることを論証している。
(中京西部・鈴木 卓)