理事提言/総合診療専門医に危機感 医師の統制強化につながる?  PDF

理事提言/総合診療専門医に危機感 医師の統制強化につながる?

 
政策部会 増井 明
 
 総合医、総合診療という言葉を最近よく聞くようになった。2013年4月22日には、厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」において最終報告書がまとめられ、新たな専門医として「総合診療専門医」が提案されている。この課題を引き継ぐ形で、14年5月に中立的な第三者機関「一般社団法人日本専門医機構」が正式に発足。機構の中に総合診療専門医に関する委員会が立ち上げられ、議論が進められている。
 これまで「専門医」は、それぞれの学会が個別に専門医を認定していたが、厚生労働省は、各学会に代わり専門医の資格認定を行う、日本専門医機構に委ねた。日本医学会会長の高久史麿氏は、これで質の高い専門医を育てることができると言っている。しかし、診療科標榜のためには専門医の取得が必須となる。そして、これらは診療科ごとの医師数偏在を是正する効果(医師の地域偏在解消は医療界のオートノミー)も期待されると述べている。
 しかし、この制度は問題点がいくつかあるように思う。「新専門医制度」では総合診療医が専門医となり、それは多くの医師に総合診療医になってもらうための動機づけになる。しかし主目的は別で、医師の地域偏在・診療科偏在による医療崩壊を防ぐ(という厚労省の意向の)ため、「地域別、科別の専門医総枠規制」を設けて「現場の医師の統制強化」を図ることのように思える。そして自由標榜制は廃止されていくだろう。このような厚労省の意向に沿った「中立的な第三者機関」という名の「現場の医師を統制するための官僚機構(天下り先)」が作られるように思えてならない。
 「現場の医師の統制強化」は、「新専門医制度」だけでなく、医療法改定(2014年予定)、全員強制加盟の医師会制度案(2013年)や「徴医制」の構想など、ますます強められようとしている。統制される現場の医師はもちろん、そのような医師に医療を受ける患者の満足度は低くなるだろう。また、「現場の医師の統制強化」は医療資源の有効活用から考えても、効率の悪いものになるだろうと想像できる。それとすでに各科の専門医を取得している者の移行措置を含めた専門医の認定・更新、専門医の認定機関、サブスペシャリティ領域の問題など議論すべきことは沢山ある。循環器や消化器など、明確に診療領域が特定できる専門医は認める一方、疾患名や症状を冠した専門医のほか、特殊技能に関する専門医は別に考えることになりそうだ。現在、私は日本内科学会認定総合内科専門医と日本循環器学会認定循環器専門医、日本臨床内科医会認定専門医の資格を持っている。今後、これらの資格がどう変わっていくのか、注意深く見守っていくつもりだ。

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