環境問題を考える(123)  PDF

環境問題を考える(123)

 
放射線禍から人々の生活と命守りたい(1)
 
 東日本大震災と大津波による福島原発の大事故発生から、3年半が経った。福島第一原発では、4基の原子炉でメルトダウンした燃料が、原子炉の底部を破り、コンクリート壁に食い込み、チャイナシンドロームならぬ、ジャパンシンドローム的危機すら、生じかねない事態が続いている。これまでに外部に漏れ出した放射線量は、少なく見積もっても154兆ベクレルを超え、福島県をはじめ、東日本、日本全土、地球全体を汚染し続けている。
 今も、汚染水を通して、地下水に、海に漏れ続けている。1平方メートル当たりのセシウム134と137の蓄積土地汚染はチェルノブイリを超え、チェルノブイリ:最高148万〜370万ベクレルに対し、福島:300万〜3千万ベクレルにも達している(2011年5月東電福島原発、事故対策総合本部共同記者会見発表)。
 崩壊した原子炉を安全に廃炉にする見通しも、40〜50年はかかると推定されているものの、その見通しすらたっていないのが現実だ。地方紙福島民報には、毎日福島県内各地のモニタリングポストからの空中放射能線量が掲載されているが、測定地点のデータの改善は見られても、あと300年以上消えないセシウム137、プルトニウムの中で通常の被曝限度の年間1ミリシーベルトを20倍にも水増しした20ミリの中で生きよと強いられている福島県民の現実は変わらない。
 ゴーストタウン化した浪江町の2万1千人の町民はじめ、今も約15万人が、住処を失い、避難を強いられている。
 最近、当時の福島第一原発所長吉田氏の調書内容の報道をめぐり、原発職員の「逃亡」と書いた朝日の「誤報」が、非難されている。調書から見えてくる事実は、大地震と津波により、東日本壊滅に直結する原子炉崩壊の危機が、彼の決死の奮闘と、重なった幸運により、奇跡的に回避され、現在に先延しされたということなのだ。当時の民主党政府当局や、県民に「安全」な避難策を選択するための正しい緊急の情報すら与えず、予想を超えた事態の前に右往左往していた東電や保安院など無責任な姿こそ糾弾されるべきではないか。
(中京西部・島津恒敏)

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