保団連医療研究フォーラムで発表
恒例のNO2測定結果から医の倫理まで
第29回保団連医療研究フォーラムが、9月13・14日に札幌で開催された。今回のメインテーマは「食の安全と命の安心」。全国の協会・医会から約700人が参加した。13日は作家の池澤夏樹氏を講師に「医業と倫理」と題した記念講演が開催され、翌14日には六つの分科会、ポスターセッション、三つのシンポジウムが開催された。
過去の医学史検証を
医学史の部門では、垣田理事長が医の倫理をテーマに「ハルビン視察ツアー『戦争と医学を考える』」を発表した。これは、2015年に開催される医学会総会に向け、協会も加わる「医の倫理」実行委員会が京都プレ企画第1弾として5月に実施したもの。
侵華日軍第七三一部隊罪証陳列館の見学や陳列館館長らとの懇談のようすを伝え、化学兵器を日本軍が使用した事実に関する資料や、細菌兵器開発に関する資料など、731部隊の行為が総合的・多角的に検証されていたことを報告した。
被災者に寄り添った医療の重要性
公害環境部門では、飯田理事が13年12月に原発事故からの避難者とともに開催したワークショップの内容を発表。医療者と避難者の貴重な対話の場となったことや、避難者からは地元に戻るべきかという悩み、夫婦での意見の対立、二重生活の苦しさなどが率直に語られる場ともなった。ここで出された意見をもとに、協会は今後、医療団体としてどう支援していくべきか。また、より多くの医療者に現状を伝えるにはどうしたらよいのかを模索していることを報告した。
会員協力のもと府内の大気汚染を調査
また同部門で、協会環境対策委員の山本昭郎氏が2001年より、会員協力のもと継続して行っている京都府内の大気汚染調査の結果を発表。ここ数年の観測結果から府内のNO2濃度が減少しているかと思われたが、今回の結果からは依然として大気汚染が継続していると報告。空気がきれいな地域と汚れている地域の差が縮まり、大気汚染が拡散しているとした。
長年の経験活かし紛争事例検証
ポスターセッションでは、宇田理事が協会で解決支援した紛争事例を統計的に検討した内容を発表。協会が40年間にわたって実施している会員の医事紛争に対する解決支援活動では、統計数をみても医事紛争数2091例に対し、解決数1868例となっており、有用なものと強調。また、最近の医療事故調査では、解剖の実施が重要であることや、医事紛争の事例を挙げて、病院の場合などは病院管理者と実際に処置・手術などを行った医療実施者との間で利益が相反する可能性もあることを指摘。医療実施者にも個別に弁護士など法律顧問・代理人の準備が必要だとした。
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次回の保団連医療研究フォーラムは、15年10月10・11日、東京の都市センターホテルの開催予定で、どなたでもご参加いただける。発表テーマも在宅医療・介護、診療の研究と工夫など日常の診療に基づいたものから、職業病、医学史、医療運動史など多岐にわたるので、ぜひ会員各位にご参加いただきたい。