私のすすめる メダカ飼育 水槽の中の大きな世界
垣田敬治(西陣)
昨年、メダカが突然私のところにやって来ました。子どものころに小川で見たことはありますが、お世話をしたことは一度もありませんでした。さあ、どのようにお付き合いをしていくか思案をしましたが、とにかく息子が飼っていた水槽やポンプを利用し、川藻も入れて泳いでいただくことにしました。じっと水槽を眺めて数日が経ちましたが、メダカだけではいかにも人為的でお友達が一緒だといいなと思いました。そこで、コリドラス・アエネウスという水槽の底を掃除してくれる厳つい魚を2匹同居させました。また、同じナマズ目のオトシン・アーノルディという魚にも2匹来ていただきました。これは水槽のガラス壁にくっついて藻を食べてくれます。河エビも付き合ってくれ、水槽の大きさは変わりませんが、大きな世界が広がりました。ただ「どじょう」はこの水槽に馴染んでくれず消えていきました。これで我が家の魚類の大宇宙の出来上がりです。
週に1回、三分の一程度の水を替え、毎日朝夕人工飼料とミミズの乾燥品を与え、すいすいと水槽を泳ぐ姿は見事なものです。メダカは目が大きく頭部の上端が飛び出していることがその名前の由来と聞き、一日中まじまじと水槽をのぞきこみ、光の量が足りないのでLEDのランプを増設しました。メダカはヒメダカ、シロメダカ、アオメダカなどいろいろありますが、お迎えするときは何が何だか分からず来てもらっています。その後のじっと見る観察がなぜか心躍らせます。飼育道具もいろいろ増えて、大きなスポイトや大きなピンセットなど見慣れないものも加わっています。
最近、やっとメダカの子どもが生まれ始めました。思いのほか小さな子どもメダカが水槽界を泳ぎまわっている姿は、人の子どもが自由奔放にふるまうのと似て微笑んでしまいます。これが生きる幸せなのかもしれません。わが水槽界では今やお産ブームでメダカの少子高齢化は免れそうです。やはり環境を整備し、幸せな生活を確保すると生き物は世代を引き継いでいくものだと思います。せっかくこの世に生まれてきて命を粗末に戦争ごっこを繰り返す智恵の足りない人間世界に「幸せとは何か、生きる意味とは何か」を教えてくれているかのような気持ちになります。上から目線ですが、飼育していて甲斐があると思う瞬間です。
ところで、「めだかの学校」という歌があります。15年戦争後に作られた歌でNHKの子ども向け番組で発表されました。茶木という方が、神奈川県小田原市にある荻窪用水で息子と交わした思い出を歌ったものらしいです。荻窪用水でお父さんが「あんまり大きな声を出すとメダカが逃げてしまうよ」と言ったら、息子が「大丈夫。また来るよ。だって、ここはメダカの学校だもん」。
何かとガサガサした世の中ですが、人間の考えるレベルを超えたところでメダカをはじめ生き物は、多くのことを人に教えているように思います。お父さんと息子が自然を相手に、いろいろな事柄を話しつつ人生の時を刻めるような、そんな社会が人の社会だと思います。