先生の医院拝見!
個性溢れる京都の医院。今回は、歴史にスポットをあて、当時の医院そのものや地域医療の姿を垣間見ようと二つの医院を拝見しました。
武田医院(西京)
蔵に眠る貴重な品々
西京区上桂にある武田医院(武田信英院長)は、明治以前より今の場所で医院を代々引き継いでおり、数多くの古文書や昔の医療機器、薬剤までもが蔵に眠っている。その一部を診察室の陳列棚に展示。武田院長もどう使用するのかわからないというものまで、並べられていた。
中には『京都府醫師繪葛野郡支部繪員名簿』なるものも。京都府葛野郡が、現在のどの地域までなのかは判然としないが、おそらく西京区と右京区の一部で、桂川より西に在住の医師は、武田院長の曽祖父にあたる武田信壽氏を含め3人だったらしい。ちなみに、当時の医師会費も記されており、大正3年度の年間会費は壱圓50銭とのこと。
陳列されている器具を見ても、外科セットや種痘器、人工気胸器から抜歯鉗子まで、現代と比較するとかなり守備範囲の広いラインナップとなっている。当時の医師は本当の意味で総合診療医でなければならなかったのだろう。
ご自身の医院案内ホームページで、武田院長は「温故知新・賢明な総合診療医を目指し日々それなりに勉強しては居りますが、現代医療に必要な知識は広く深く、私の能力では一流の総合医にはなれそうもありません。でも幸いにして、現在の西京医師会には多くの各科専門医の先生方が在籍されております。そこで私は、賢明な総合診療医は無理でも懸命な臨床医・選別医でありたいと思っているのです」と語っておられる。
耳鼻咽喉科鈴木医院(西陣)
看板が歴史的意匠に
上京区にある耳鼻咽喉科鈴木医院(鈴木由一院長)は、おおよそ100年になる京町家。開院当時の趣をそのまま今に伝えている。院内の間取りなども大きくは変わらない。一部の照明器具やガラス戸は当時のままだそうだ。武田医院と同じく、鈴木医院にもそれ自体が年代物の陳列棚があり、鈴木院長が使用される器具などが収められていた。
診察室では、今では使用しない機器や器具も見せていただいた。赤外線で患部を温め治療を行う器具や、昔の集音器などがそうで、集音器は使い方まで見せていただいた。
また、耳鼻咽喉科鈴木医院の表看板は、2014年3月15日に歴史的意匠屋外広告物として京都市に登録された。これは、歴史的な意匠を有し、かつ、位置・規模・形態が都市の景観の維持および向上に寄与していると認められる屋外広告物を指定するもの。いわいる「老舗」といわれるような商店などの表看板が多く指定されている。一般的な電飾突出し看板の陰でひっそりと、しかし堂々と耳鼻咽喉科鈴木医院の表玄関に掲げられている。