主張/医療安全にかかわる今後の予想 懸念される第二次医療崩壊
前年度である2013年度の京都府保険医協会に報告された紛争件数は29件で、20件台まで減少したのは、1981年度以来である。これは非常に好ましい傾向である。
しかしながら、17年度前後にこの件数は増加に転ずるかもしれない。協会の45年の医事紛争の統計からの推測によると、医事紛争の件数は不思議なことにおよそ10年ごとに山があり、その年度が17年度前後に当たる。10年前に医事紛争数が増加に転じた要因の一つはマスコミの医療事故報道がきっかけであったことは記憶に新しい。
折しも最近、某大学病院の小児に対する麻酔事故をはじめ医療事故報道がやや増えつつあるのは偶然であろうか。また、来年秋には医療版事故調査制度が導入されることが決まっており、加えて混合診療の拡大や医療介護提供体制の改革により、ますます医療事故に関する関心が深まっていくと思われる。
先述の如く、現時点では全国的にも医事紛争は減少傾向にある。医療裁判の医療機関側の勝訴率も、最低だった5割台から8割近くまで回復を見せている。今が、医療安全としては最も落ち着いている時期かもしれない。「懸念される第二次医療崩壊」、少しオーバーな表現かもしれないが、可能性としては十分ありうると思われる。前回の医療崩壊では医事紛争や医療事故の増加とそれを助長するかのようなマスコミ報道により、医師をはじめ、医療従事者の心は折れ、医療に携わる誇りも消え失せようとしていた。
我々、協会の医療安全対策は、こういう事態を二度と起こさせないためにも、理論のみでなく、会員の皆さまの目線に立って実地活動していくものである。この姿勢を保ち続けることで、医療従事者としての誇りを守り、国民の健康と安全を守る団体として存在し続けたい。前述の予測が会員をはじめとする医療関係者の努力により良い意味で大幅に外れることを心から望むとともに協会としても全力を挙げて医療事故減少に寄与するよう邁進していきたい。