2014診療報酬改定こうみる(7)精神科
京都精神科医会理事 中嶋章作
多剤投与等の減算目立つ
今回の改定では「児童精神」の精神療法の評価と、かねてより問題視されていた「多剤投与」への減算が目立った
児童精神(20歳未満)に関する通院・在宅精神療法については当該医療機関の初診から1年以内に限り、20歳未満加算が200点から350点に引き上げられた。ただし、「必要に応じて児童相談所等と連携し、保護者等へ適切な指導を行った上で」との付則があり、発達障害などへの積極的対応を意識した改定とも読み取れる。なお、付則については「必要に応じて」とあり、当座に連携や指導を行っていなくとも加算ができるとしている。
「多剤投与」の減算については前回の改定時に既に今回の改定の布石として「抗不安薬又は睡眠薬を3剤以上処方した場合」に精神科継続外来支援・指導料が11点減算されていた。今回はさらに拡大されて減算対象薬剤が「3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬、4種類以上の抗精神病薬、のいずれか」となった。この多剤投与を行った場合の減算内容は「精神科継続外来支援・指導料が算定不可」「処方せん料が30点に減算」「処方料が20点に減算」さらに「薬剤料が100分の80に減算」するというかなり厳しいものである。ただし、多剤投与であっても減算しない除外規定があり、紙面の関係で記載しないが確認していただきたい。さらにこの多剤投与に関してはこの6月分の多剤投与者数に関する報告書を7月に地方厚生局に届けなければならないなど種々の通達に留意する必要性がある。実施は準備期間等の配慮から10月からとなっている。
この5月になって厚労省から精神科病床の大幅削減という発表がなされた。先進諸国に比べて精神科病床が過剰という内外からの長年の指摘を具体的に解消すべく動き出したものである。今回の改定ではその前提として「入院期間短縮、長期入院患者の地域移行促進・定着、認知症対策」などに配分の重きが置かれており、現時点では医師配置等の現実性はともかく精神科病院にはプラス改定になったとする論評が多い。しかし、特に地域移行の受け皿になる態勢整備などの不備が多く、今後、精神科医療全般に波乱に富む流れが生まれ、かつてないパラダイムシフトが求められるものである。改定の点数的効果は大きくはないが、今後の診療所、病院問わず精神医療体制を大きく誘導して行くものであることに注視する必要性がある。
(おわり)