講演会「大転換する医療制度」を開催 医療者はどう生きるか
協会は5月25日、会員向け講演会「大転換する医療制度—医療者はどう生きるか」を開催。医療・介護総合確保法案による提供体制改革で、制度の大転換が狙われ、今次診療報酬改定で2025年に向けた病床機能分化・地域包括ケア推進が打ち出された。今講演会は、今日の提供体制改革の本質的理解と臨床現場からの意見交流を目的に開催した。(詳細は後日掲載)
国の構想読み解く
講演会は吉村陽理事の司会で進行。垣田理事長の開会あいさつの後、佛教大学教授の岡祐司氏が講演した。岡氏は膨大な資料から、国の地域完結型医療の本当の意味に言及。医療機関再編成を念頭に、非営利ホールディングカンパニー方式での医療法人の大規模化で「医療・介護メガ事業体」を誕生させ、地域を丸ごと託す構想ではないか。これが「医療産業化」の道筋につながるとした。診療所をメガ事業体へ属させて「緩やかなゲートキーパー機能」を担わせる可能性にも言及し、提供体制改革から総合診療専門医に至る政策展開を読み解いた。その上で、かかりつけ医は必要だが、患者はあてがいを望んでいない。医師・患者の信頼関係そのものは、制度的枠組みで構築できるものでなく、保険診療の保障を前提に患者自らがかかりつけ医と出会うアクセスを支える仕組みこそ必要だ。医師の役割は「地域の科学者」であり、ゲートキーパーではない。専門を極めて開業する日本の医師だからこそ、患者は信頼し選択できると強調した。さらに講演を受け、草田英嗣理事(上京東部医師会)が現場視点からの法案解説をスライドにまとめて報告した。
現場への影響深刻
続いて臨床現場からの報告。最初に鈴木卓副理事長が今次診療報酬改定を解説し、提供体制改革が地域医療を揺るがしていると指摘。
次に、「川上の改革」にある病院勤務医として、松原為人氏(京都民医連中央病院副院長)が報告。改定での7対1の動向から、病床機能報告制度等を俯瞰しつつ、総合診療専門医構想にも言及し、病院が立たされる岐路の意味を鮮明に解説した。
「川下の改革」に位置する立場から、郡部・都市部の診療所医師がそれぞれ報告。郡部で開業する医師として柳澤衛氏(相楽医師会)が、過疎化で地域完結が遠ざかる実態を無視した地域包括ケア推進の矛盾を指摘。都市部からは眼科専門開業の草田理事が報告。自らの開業に至る経緯を語った上で、専門的修練を積んだ医師が開業し、連携して地域医療を支える現状こそ正しく評価されるべきと訴えた。そして、富める者のための医療が表出し、国民皆保険制度が危機にある中、強者であれ弱者であれ、同じ高い水準の医療が保障される皆保険を守ろうと呼びかけた。
懸念や怒りが続々と
講演・報告後は会場からの意見を受けた。地区医師会の立場から山下琢下京西部医師会長が発言。その他にも厳しい実態報告や国の改革への怒りが発言された。