医界寸評  PDF

医界寸評

 泰緬鉄道は、クワイ河橋の建設と爆破を描いた映画「戦場にかける橋」(デヴィッド・リーン監督57年)をまた観た▼ビルマ国境近くタイ山中の日本軍の捕虜収容所で所長斎藤大佐(早川雪洲)は、人手不足から将校にまで建設労働を強制するが、捕虜の隊長ニコルソン中佐(A・ギネス)は、頑固一徹の典型的英国軍人でジュネーブ協定を盾に断り、他の将校と懲罰的・虐待的対応を受ける。完成期限切迫から所長は妥協し、ニコルソンも納得して現場に立つと、英軍将校の技術的協力も得られ、工事は着実に進行する▼その後、脱走した米軍水兵シアーズ(W・ホールデン)を道案内に、英軍の爆破隊が完成した橋を通過列車もろ共に破壊する。ニコルソンは橋への愛着から、友軍を妨害する利敵行為に走るのが何とも切ない▼P・ブールの原作で、捕虜への懲罰・虐待は、実体験を基に描かれ、「戦争であっても国際的ルールを守れば捕虜は死なずに済んだはず」「なぜ、日本人はあんなに不必要に残酷な仕打ちをしたのか?」「日本人看守は、どう思って僕たちをあんなに殴ったのだ?」「なぜ、日本政府は、お詫びではなく、公式なアポロジーとある程度の額の補償をしないのか?」と、納得できぬ疑問と要求が呈される。戦争中でも如何に法と秩序を維持して共生するか? 見識が問われる物語である。(卯蛙)

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