便乗して進む「特区」に警鐘 神田氏を講師にTPP学習会  PDF

便乗して進む「特区」に警鐘 神田氏を講師にTPP学習会

 TPP京都ネットは5月21日、公開学習会「いのちに関わるTPP 生活はどう変わる?」を開催し、49人が参加した。講師は、行き過ぎた経済のグローバル化、自由化によって引き起こされているさまざまな問題について情報発信を続けているNPO法人AMネット理事の神田浩史氏。

 神田氏は、4月の米大統領訪日、5月の閣僚会合でもTPPは合意に至らず、このまま漂流するのか、日米で組んで他国を説き伏せるのか、7月の閣僚会合までが大事な時期だと指摘。TPPの問題点については、一昨年12月の衆院選での自民党公約が6項目で的確に整理されている。完全履行されるとこれだけのことが危ないのに、自民党政権は嬉々として交渉を行っていると批判した。

 TPPに便乗して進んでいるのが、日米並行協議と国家戦略特区。関西圏は、国家戦略特区で医療や労働規制の緩和をするとされている。先端医療の拠点をつくるということは良い面もあるが、必要とされる既存の医療分野が抑制される面もある。儲かる先端医療にシフトすれば、対の問題として小児科や産婦人科、過疎地医療が疎かになってしまうことを考えねばならない。さらに、いったん緩和したものを強化しようとすればISD条項により訴訟を起こされると、その危険性を説明した。

 また、「国益」を口実にTPPにより「無国籍企業」の儲けのために短期的な経済利益だけを追求すれば、世界の格差はより深刻になる。日本の食料自給率はTPP参加で13%程度に低下すると農水省は試算(現在39%)しており、日本は米を年間700万トン輸入する必要が生じる。これは世界の米貿易量の2〜3割にあたり、世界の食料事情は一変し、飢餓人口(現在9億人)の増大にもつながる。また、太平洋を挟んで今以上にモノを行き交わせることは環境指標を軒並み悪化させる。これ以上、南北問題(他所からの収奪構造)や環境問題(将来世代への課題付け回し)を悪化させない視点も重要だとした。

 TPPは、太平洋を越えてのモノ、カネ、ヒトの移動をより盛んにすることを眼目とするもので、結果としてそれを「できる人」と「やらされる人」の二極分化がより一層進む。私たちはこれ以上、遠くのモノを消費し、遠くのカネに影響され、遠くのヒトと競争することを望むのか—の分岐点に立っている。循環型社会の再構築など地域社会の見直しを通じて穏豊な社会を目指すべきと強調した。

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