14診療報酬改定こうみる(4)
外 科 副理事長 林 一資
減点になった手術が81 士気低下・勤務医負担増
今次改定の手術点数は厳しいものとなった。厚労省は、外科系学会社会保険委員会連合の試案第8・2版において、試案第8版と比較して、相当程度人件費の増加および減少が認められた手術を対象として、材料に係る費用の占める割合にも配慮しつつ見直しを行ったとしている。増点された手術は19にとどまり、減点された手術は81に及んだ。消費税増税により、さまざまな材料を使用する手術において材料費に係る消費税増税分は重く、その部分が考慮されなかったことは問題といえる。
新たに保険導入された手術は49項目で、施設基準が必要な手術が29項目追加された。組織拡張器による再建手術の1.乳房(再建手術)の場合やゲル充填人工乳房を用いた乳房再建術などが、診療所でも届出可能として追加された。複数手術の取扱いに追加された手術が31項目で認められた。一方、帝王切開術が2千点下げられた。手術点数は手術時間と技術度で人件費を算定、材料費用を考慮し評価される。医療機器が進化し手術時間の短縮はよいが、医師の負担が比例的に減少するわけではない。技術度も患者の状態により変化する。手術時間と技術度による評価は必要ではあるが、さらに客観的な評価基準が必要であるように思う。また、手術の休日・時間外・深夜加算「1」が新設されたが、厳しい施設基準が必要であり、大病院でしか算定は難しい。
診療所で汎用される手術料は前回同様、おおむね据え置かれた。このことは診療所の医師の志気を失くし、結果として病院勤務医の負担を増大させることになりはしないかと危惧を抱いてしまう。
創傷処理と小児創傷処理の「筋肉、臓器に達するもの」について、単に創傷の深さを指すものではなく、筋肉、臓器になんらかの処理を行った場合を指すことが明記された。
胃瘻造設術が4千点引き下げられ、実施件数等に関する施設基準が新設され、基準を満たせない場合は所定点数の100分の80で算定することになった(15年3月31日までは算定可)。胃瘻閉鎖術は開腹や腹腔鏡による操作等をともなう胃瘻閉鎖を行った場合に算定。別に、開腹や腹腔鏡による操作ではなく、胃瘻カテーテルを抜去して閉鎖した場合に算定する胃瘻抜去術が新設された。「安易」な胃瘻造設への制限と考えられる。
手術は医学・医療の進歩が保険診療に反映される上で、最も目に見える部分である。確立された医療であれば、なるべく早い診療報酬への反映を期待したいものである。
整形外科 保険部会理事 田中伸明
在宅自己注射指導管理料の引き下げは治療の軽視!
整形外科に関する今次改定の内容について説明する。
在宅患者訪問褥瘡管理指導料が新設された。750点。重点的な褥瘡管理が必要な患者に対し医師、管理栄養士、看護師が共同して褥瘡管理に関する計画的な指導管理を行った場合に算定する。
在宅自己注射指導管理料が1以外の場合(820点)の点数が自己注射の総回数に応じた四つに区分され、引き下げられた。月3回以下100点、月4回以上190点、月8回以上290点、月28回以上810点。導入初期加算が3カ月を限度に算定可能。500点。
リウマトイド因子(RA)半定量に関しては他の検査で代替できない理由をレセプトに記載する必要がある。NTX算定の際は前回算定日をレセプト摘要欄に記載する必要がある。
電子画像管理加算の対象はデジタル撮影した画像であり、アナログ撮影した画像をデジタル処理して管理保存した場合は算定できないことが明文化された(CR法はデジタル撮影に該当する)。
J000創傷処置の6000以上、J001熱傷処置3000以上6000未満、6000以上について6歳未満の乳幼児の加算50点が新設された。
局所院圧閉鎖処置が局所院圧閉鎖処置(入院)と名称変更され、局所院圧閉鎖処置(入院外)が新設された。対象疾患は外傷性裂開創(一次閉鎖が不可能なもの)、外科手術後離開創・開放創、四肢切断端開放創、デブリードマン後皮膚欠損創。
輸血では貯血式自己血輸血管理体制加算が新設された。施設基準に適合していることを地方厚生局に届出た場合に50点を所定点数に加算する。
神経ブロックと同時に行われたトリガーポイント注射や神経幹内注射は部位にかかわらず別に算定できないことが明文化された。
手術点数としての新設は自家培養軟骨移植術14030点、自家培養軟骨組織採取術4510点。短期滞在手術等基本料3の対象が拡大された。整形領域では関節鏡下手根管開放手術がこれに含まれる。
今回の改定では整形外科関連領域では目立ったものはなく据え置かれた感じである。しかし、在宅自己注射指導管理料の引き下げはリウマチや骨粗鬆症の治療が軽んじられている結果であり許しがたい。