医界寸評  PDF

医界寸評

 最近EBMの根幹となるエビデンス作りのため、企業主導型大規模臨床試験が相次いでいる。結論は試験薬が好ましい、と発表されることが多い。そして派手に宣伝される。ガイドラインになることもある。一方で、早々に中止される研究もある。場合によっては、二次エンドポイントの中から、少しでも有利なところを見つけ、その部分のみを派手に宣伝することもある。研究参加者も積極的なためか、公的機関主導の研究より展開が早い▼国公私立5大学で行われたディオバンの臨床研究では、其々の大学がデータの処理・解析を自らの研究グループでは行っていなかった。謝罪記者会見でも「ノバルティス社員以外にデータを操作できる人間がいなかった」と言った大学もあった。企業から様々な形で資金や便宜が与えられていたらしい。解析結果と日常臨床上の実感とに解離はなかったのか?武田薬品のブロプレスの臨床研究でも疑惑が指摘されている▼政府は産学共同を推進している。経済的基盤がないことには国も個人も活動できない。お金のために企業の研究を請け負っても良い。しかし医学、特に臨床研究者は、自らの臨床経験に基づいて研究を行ってほしい▼我々医師は矜持を持たなければならない。自分で理解し、制御できる仕事を心がけなければならない。「真面目が一番」の日本に戻ってほしい。(恭仁)

ページの先頭へ