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社保研レポート

第651回(1/11) 不定愁訴に対する漢方治療
講師:洛和会音羽病院 心臓内科副部長/漢方外来 山崎武俊 氏

不定愁訴に対する漢方治療の重要性

 日常診療において、臨床所見や検査に異常はないが、身体の不調の訴えがあり、治療に困ることがあります。また、西洋医学的治療だけでなく、漢方治療も取り入れることによって、違う視点からの解決法が得られることがあります。

 本研究会では、動悸・易興奮・不眠といった不定愁訴に対して漢方治療により軽快した症例を紹介されました。各々の訴えに対して年齢や体力を考慮し、腹診も行った上で、9種類の方剤が選択されていました。

 漢方治療では、身体の一症状に対するだけではなく、精神と身体全体を一つと考えます。そのために詳細な問診により自覚症状や体力を把握し、必要に応じて切診(脈診・舌診・腹診)を行います。そして、西洋医学的には病気とまではいえないが、健康ではない状態を把握し軽減していきます。

 精神と身体全体を一つととらえて診ること、治療には個人差があること、標榜する科は異なっても、不定愁訴を診る機会に遭遇することがあることについて考えさせられました。

 最後に、妊婦に対して投与すべきでない方剤(駆血剤、附子を含む漢方薬、発汗や下痢を起こす漢方薬)および副作用(低カリウム血症、間質性肺炎)に関する説明がありました。投与期間が長期におよぶ場合は、副作用に関して注意を要し、時には使用方剤の見直しも必要となります。

 漢方医学では、病気の原因を心と体を一体とした生体の均衡の乱れととらえ、その乱れを正常な方向に戻すことを目標にしていると同時に、自然治癒力も大事にするという解説もありました。

 私たちを取り巻く環境は刻々と変化し、発展してきました。医療も大きく進化してきました。そのような中で、恒常性が破綻されて心身の健康を損ない、病気になった状態を本来の健康な状態に近づける漢方治療は大切であると思われます。

 今後も漢方医学に触れる機会が増え、日常診療において対応できることを期待します。

(下京西部・赤澤博美)

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