京都市は事実に基づく指摘に対応せず 市リハセン病院廃止で「難民」化懸念
京都市保健福祉局は、「京都市身体障害者リハビリテーションセンター条例の一部を改正する条例の制定について(議第66号)」を京都市会に提出した。条例改正案は「病院としての事業および補装具製作施設としての事業の廃止」を行うものであり、協会が足かけ2年にわたり、撤回を求めてきた市リハセン附属病院廃止を決定しようとするもの。仮に条例改正案が成立すれば、2015年4月1日をもって京都市民は市リハセン附属病院を奪われる。
市3センターの合築計画明らかに
市当局は2月4日、市会教育福祉委員会に「障害保健福祉施策の総合的な推進と児童福祉施策の充実・強化に向けた取組方向」なる文書を提出。2016年に病床機能を失くした市リハセンと、児童福祉センター(上京区)、こころの健康増進センター(中京区)を、旧医師会館跡地の京都地域医療学際研究所附属病院(がくさい病院)や京都市立病院に隣接する土地(現こころの健康増進センター含)に「合築」する計画を明らかにした。市当局が今般の市リハセン廃止方針を打ち出すにあたり、当初から合築計画を念頭に置いていた可能性もあるが、真相は定かでない。
いずれにせよ、がくさい病院や市立病院の病床機能が市リハセン附属病院の代替機能になることは難しいと考えられ、合築で新しい立派な施設を建設しても、市リハセン附属病院廃止による患者さんたちへの影響をなくすことはできない。なおかつ、合築方針は京都市社会福祉審議会や京都市障害者施策推進協議会で諮られた形跡はなく、またしても市民・当事者不在の提案との批判がおきている。
公的な医療保障の重要性認識せよ
最大の争点は、京都市が地方自治体として公的に医療を保障する重要性をどう認識しているかである。そして、具体的論点は、市が主張する「民間病院にも市リハセン附属病院廃止後の受け皿機能がある」というのは本当なのか? に収斂しつつある。京都新聞(2月5日夕刊)は「民間受入れ調査せず」と大きく見出しを打った記事で、市当局が市リハセン附属病院と同様に障害者施設等入院基本料を適用し、リハビリ施設等入院基本料を届け出る市内の20病院1508床が受け皿になり得るとの主張に疑問を呈した。「附属病院が受け入れる症状の患者を受け入れるのは現実としては無理」というある病院の担当者の声を紹介し、統計的な数字の資料を参考にしただけで、受け入れ先の実態調査もせずに廃止をすすめる市の姿勢を厳しく指摘している。
そもそも、診療報酬制度における回復期病床の入院日数制限の厳格さ、算定日数制限超の患者さんへのリハビリテーション継続に対する締め付けの厳しさを当局は認識しているのか。国は医療保険給付の抑制策として制度設計したのであり、民間病院がそれを突破することは難しい。なおかつ、各病院が障害者施設等入院基本料算定病床を保持する理由はさまざまであり、市リハセン附属病院と同様の目的で持っているわけではない。これは協会や当事者・現場スタッフの主張し続けている事実である。京都新聞記事はこの事情を深く調査し、書かれたものと思われ、極めてまっとうな主張である。
しかし、市当局はこの指摘を完全に無視し、今日に至ってもまだ同様の答弁を議会で繰り返している。事実を突きつけられても答弁を変更しない市の対応では、市民の理解は得られないであろう。協会は最後の最後まで、患者の人権を守る医療者の立場で、廃止撤回を要求する。