理事提言/地域包括ケアシステムを考える  PDF

 理事提言/地域包括ケアシステムを考える

政策部会 礒部博子

 皆さまもご存じの通り、一昨年12月に安倍政権が誕生し、アベノミクスと称する経済政策が実施されました。円安、株価上昇と景気回復傾向が見え始めた中、成長戦略の一つとして、今後の社会保障の在り方に関する方向性が示されました。

 この方向性こそが、私たち医療に携わる者にとって、真剣に考えなくてはならない問題提起です。

 社会保障制度改革で強調されているのは「持続可能性」です。高齢者の医療がこれから先も増大するのは目に見えている。だから給付抑制をしなくてはならない。それには医療・介護サービス提供体制を改革しなくてはならないという論理です。この論理に基づいて地域包括ケアシステムは生まれました。要するに社会保障制度における国家の責任を軽くし、国民の自己責任に逆戻りさせる内容なのです。

 地域包括ケアシステムの定義は次のようなものです。ニーズに応じた住宅が提供されることを基本に、安全・安心・健康を確保するために、医療・介護のみならず福祉サービスを含めたさまざまな生活支援サービスが、中学校区程度の日常生活圏域で30分以内に提供できる地域体制。

 まず問題なのは、このシステムの中心になる保険・医療・社会福祉の供給の保障が明確ではなく、各地方自治体に任されてしまうということです。さらに介護職に医療行為を代替させ、医師から看護師へ、看護師から介護職へとよりコストの低い職種へケアを移す方向に持っていこうとしています。

 このままでは、長い間患者との共同関係の中で専門性を発揮してきた医療の在り方が歪められてしまうのではないでしょうか。

 では今、私たち医療従事者は何をすべきなのでしょう。まずは私たちが今まで担ってきた地域医療における役割をもっと府民に知ってもらい、その責任を今後も果たし続けるべく地域の患者さんや専門職の方々と話し合う必要があるのではないでしょうか。

 日々の仕事と雑用に追われ、毎日忙しく働いている医師の皆さん、今こそ立ち止まって考えてみてはいかがでしょう。

 

ページの先頭へ