医療安全対策の常識と工夫73/「謝罪文を書いてほしい」と言われたら  PDF

医療安全対策の常識と工夫73

「謝罪文を書いてほしい」と言われたら

 医療機関側が患者さん側に対して、謝罪をする条件はすでにお話ししましたが、時に患者さん側から「謝罪を文書で記してほしい」と言われることもあると思います。当然ながら、いかに医療行為の結果が深刻であっても、医療過誤や賠償責任の有無が、第三者的にも明白になっていない場合は、謝罪文を書く必要はありません。もちろん、謝罪とはいかないまでも反省文も同様に必要ありません。

 本来ならば調査をしてから態度を決める、というのが医療機関側としての通常の姿勢なのですが、そうはいっても患者さん側は、なかなか納得しないことも容易に推測されます。そこで、これは一つの提案として受け取っていただきたいのですが、少しでも患者さん側の納得をえるためには、カルテに基づいて医療事故にいたるまでに何があったのか、どのような医療行為が施行されたのか、医学的・客観的レポートを作成してお渡しすることをお勧めします。そのレポートには、決して主観的な判断を含めるべきではありません。あくまで事実の記載に留めるべきでしょう。患者さんによっては、それで一応の納得をされる方もいます。納得されない場合は、何度もいうように医療機関側として、毅然とした態度が必要です。

 次に、医療過誤が明白な場合ですが、実をいいますと、その状況であっても謝意を文書化することはあまりお勧めできません。なぜならば、その文書を患者さん側がどのように使用するか判然としないからです。いわゆる「文書の一人歩き」も想像に難くありません。医療過誤を認めることと、それを文書に表すことは、実のところ必ずしも等しいものではないと思われます。もちろん、口頭でできる限りの誠意ある謝罪はすべきですが、文書化という点では、示談書を作成することを患者さん側に伝えることによって、納得をえる方法もあると思われます。いずれにしても、医療機関側としては、基本的には安易に文書を渡さないことが肝要です。

 次回は、激怒する患者さんへの対応の心構えについてお話しします。

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