【主張】この国「再生」への処方箋を  PDF

【主張】この国「再生」への処方箋を

 師走の街中を一層せわしくさせた総選挙も終わり、府内の雰囲気もクリスマスや年末へ向けて動き出している。われわれが願う医療や社会保障を守る方向へ政治は動くだろうか? 今回の選挙、争点はいくつもあった。最悪のデフレ状況下での消費税大増税であり、医療界や農業分野での反対の声が大きかったTPP参加の是非であり、原発政策も将来のエネルギーとからんで、国民生活を左右する大きな争点となった。われわれ医療界からは高齢者を巡る医療制度の在り方や、障害者福祉、さらには非正規雇用が蔓延する中での医療費負担、受診抑制なども関心が高かった。

 前回の総選挙で国民はこうした閉塞状況の打開を政権の交代に託した。これに応えるべき民主党を中心とした政権が自らの公約や国民の声を裏切り、消費税引き上げ、医療・社会保障を切り捨てる「一体改革」を強行した末の選挙であった。新しくできた政権には「人命」の上に「経済」を置く愚かさから脱却してほしい。

 この間、高速道トンネルの天井崩落や、エレベーターに挟まれた死亡事故、というにわかに信じられない報道もあった。高度経済成長をうたった時期以降にこんな世相になってきたという識者の見方もあながち間違っているとはいえない。「構造改革」は「人命」を守るためにさまざま作られた「規制」を「緩和」し、さらなる経済成長・拡大路線を追求する目的でとられた国策であった。水質汚濁や大気汚染に代表される法律を緩和し、経済成長を野放しにする道が行き着いたのは労働者の権利や賃金削減、雇用破壊であった。

 この国を再生させる処方箋は、この選挙で各「政党」から出された。デフレ下の消費税増税が引き起こす経済・国民生活の大混乱で死者が出るかも知れない。しかしこの増税を実施するには、2013年秋の閣議決定が必要というから諦めるのはまだ早い。地域の患者とともに命の目線でこれらを監視し、医療者からの提言を積み上げてゆこう。

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