今回の欧州連合(EU)のノーベル平和賞受賞は意表を突かれた感もあるが、この時期意義のある受賞であったといえる。欧州では中世以来、戦争が絶えることがなかった。ドイツとフランスだけでも19世紀から20世紀にかけて3度戦っている。第二次大戦で焦土と化した欧州は、戦争を2度と繰り返さないという理念のもとにEUを築きあげてきた。トニー・ブレア元英首相は「EUは500年の戦争状態を終わらせ、50年の平和をもたらした。大きな偉業だ」と語っている。
加盟国も27カ国、通貨ユーロを使う国も17になったが、長引く経済危機で失業率が高まり、ナショナリズムや過激な思想が台頭している。いらだったナショナリズムや戦争の時代に戻らないためにも、辛抱強く統合を進めようというメッセージを込めた平和賞といえる。
EUの精神は東南アジア諸国連合(ASEAN)や東アジア共同体構想にも引き継がれており、学ぶことは多い。尖閣諸島や竹島問題、歴史認識問題等で日中、日韓がぎすぎすしている今日、TPP(環太平洋連携協定)よりも、まずはASEANを加えたASEAN+3(日中韓)FTA(自由貿易協定)を優先協議し、東アジアの多国間でゆるやかで柔軟な互恵的ルールを作り、結果的に東アジアの発展、平和と安定に資するのは夢であろうか。(彦)