憲法を考える41
「憲法と国際条約」
【98条】1.この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。2.日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
憲法を頂点とする国内法と国際法の関係は、1つの法体系と捉える考え方(その中で国内法上位説と国際法上位説がある)と、次元の異なる別々の法体系と捉える考え方(世界には主権国家が併存し、実際の国際法は世界を律する法=世界法ではない)があるといわれています。
いずれにしても、いま国際法が国内で承認されたとき、どちらが優先されるのか、それには条約優位説と憲法優位説があります。そして前者、条約優位とするとそこには重大な問題が発生します。日本の憲法は硬性憲法として、その改正には高いハードルが設けられています。しかし条約が優先するとすれば、憲法改正手続きを経ることなく、実質的に憲法を改正したと同じ効力が、より簡単な国会承認で成り立ってしまうことです。
しかし一方、締結された条約が憲法に反すると考えられるときでも、その条約は効力を持つとするのが国際法上の原則といわれています。(違反が明白、かつ基本的な重要性を有する国内法にかかわる場合を除いて)「いずれの国も、条約に拘束されることについての同意が条約を締結する権能に関する国内法の規定に違反して表明されたという事実を、当該同意を無効にする根拠として援用することが出来ない」(回りくどい表現ですが、ウィーン条約法条約1969年に定められています)。また憲法優位説においても、条約の違憲審査を否定する説や、(日米安保条約にみられたように)憲法への適合性判断が回避される場合があるかもしれません。
以上述べたほかにも、様々に複雑な問題があるようですが、条約を結ぶときには、それが実質的に憲法の条文、あるいは精神に反することにならないかをも慎重の上にも慎重に判断すべきでしょう。例えば最近の例として、TPPは経済問題にとどまらず、憲法25条に定められた社会福祉、社会保障の向上及び増進に抵触することになってしまわないかなど見極める必要もあるのではないでしょうか。(樋口陽一著「憲法」を参考にさせていただきました)
(政策部会理事・飯田哲夫)