有床診・中小病院への管理栄養士配置義務化
入院機能を取り上げる政策!?
あらためて厚労大臣らに要望書提出
栄養管理体制の実施が、入院料算定の要件とされたことに伴い、管理栄養士配置が義務化された問題で、協会は、府内中小規模病院・有床診療所を対象にアンケート調査を実施。調査結果から、管理栄養士配置の義務化は、60床以下の病院や、有床診療所の現状と乖離があるため、義務化撤回を求める要望書を、厚生労働大臣らに提出した。
改定で栄養管理と管理栄養士配置が義務化
2012年4月の診療報酬改定で、入院料算定にあたっては、栄養管理体制の実施が義務付けられた。これは改定前、入院料の加算点数(栄養管理実施加算)として評価されていたものが、入院料本体の算定要件に組み込まれたことによる。この中で、管理栄養士配置も原則義務化されたが、病床規模やその配置の必要性を考慮しない画一的な義務化であるとして、協会は、その撤回を求め、厚労大臣らに対し要請書を提出していた(4月24日、本紙2820号既報)。改定以前に「栄養管理実施加算」を届出・算定していなかった医療機関については、管理栄養士配置を2年間猶予するとした経過措置が設けられたが、義務化の撤回には至っていない。
管理栄養士に係るアンケート調査実施
そこで協会は、このほど京都府内の200床未満の病院や有床診療所を対象にアンケート調査を実施した。病床の規模別に、?有床診療所、?小規模病院(20〜60床)、?中規模病院(61〜199床)の3区分に分けて集計した。主な入院診療科、管理栄養士の配置状況、栄養管理が必要な患者の割合など、?〜?では同じではないことが明らかとなった。病床の規模が小さくなればなるほど、管理栄養士の配置状況が少なくなること。また、専門科に特化するため、特別な栄養管理を必要とする患者の割合も少なくなり、栄養管理は医師によりできるという考え方の割合が高くなった(詳細は2面)。これは、病床規模が大きくなれば、より多様な専門職種が雇用でき、仕事内容が職種別に分化していくことによると考えられる。
管理栄養士配置義務化の撤回を求める要望書提出
協会は、この結果を重く受け止め、7月10日、「アンケート調査結果から、管理栄養士配置義務化の撤回を改めて求める(要望)」を厚労大臣ら厚労省政務三役、中医協委員らに提出した。要望書では、栄養管理体制の実施にあたって、常勤・非常勤にかかわらず管理栄養士配置の義務化を止め、病院及び有床診療所の病床規模や入院患者の特性に応じて、必要な場合にのみ配置することでよい―とするよう求めている。
有床診・小規模病院の加算届出は少なかった
厚労省は中医協で、栄養管理実施加算から入院料の算定要件に変更するにあたって、2010年度における栄養管理実施加算の算定率(88・4%)や届出割合(97・9%)の高さを資料として示し、義務化が妥当と説明した。しかし、算定率が100%ではなく、有床診療所や小規模病院の多くが算定していないのではと考えられた。また、届出割合にいたっては、病院のみの数値であり、有床診療所については資料すら示されず、議論もなされなかった。実際、京都府内で2012年3月現在、栄養管理実施加算を届け出ていた医療機関の割合は、有床診療所ではわずか1・5%、50床未満の病院でも53・3%に過ぎなかった(協会調べ)。
義務化はベッドを取り上げる政策
管理栄養士配置の画一的義務化は、結果として多くの有床診療所や小規模病院から入院機能及び病床を取り上げる政策である。アンケートにおいても、このまま管理栄養士配置の義務化が継続された場合、病床の閉鎖を考慮すると回答した医療機関が少なからずあった。地域医療への影響も危惧される。
協会は、入院患者に対する栄養管理は必要と考えており、栄養管理体制実施の必要性には反対していない。しかし、それに付随して管理栄養士配置までを義務化することに反対している。管理栄養士配置ができない有床診療所や小規模病院は、病床を手放さなければならないのか。栄養管理体制に支障がなければ、診療科や入院患者の状態など各医療機関の実情に応じて配置することでよいのではないか。引き続き厚労省の動きに注目しながら改善を求めていきたい。