医界寸評
帝王切開で第1子が生まれた。低酸素血症から重度の脳性障害が残った。記録をみれば分娩促進剤の過剰投与でその副作用だったらしい。09年1月発足の産科医療補償制度に申請して、初回600万円と0歳から19歳まで毎年120万円計3000万円の補償を受けられるようになった。「案ずるより産むが易し」と励まされ、新たな生命の誕生へとこぎつけても、誰に生じるかは不定の後遺症で、生育しつつもなお介助を要する状況では、経済的援助を含め、家族への支援が緊急の課題となる。
医療では期待や予期に反する悪しき結果が時に生じて、診断・検査・治療・収容などを伴っているため、医療事故かと疑われやすい。更に、誤った医療的判断・行為による医療過誤の発生かと、疑心暗鬼を生じてしまう
医療事故が発生すれば、まずは原状回復が緊急の課題で治療を要し、次に、原因究明の上、再発防止が必要となる。更に被害が人災・過誤によるならば、謝罪と損害賠償とが求められる。しかし、医師等の過失を主張し損害賠償を求めて提訴しても、法廷での闘争がまた大変である
本制度は設計・運営上なお問題を孕むが、原因究明や再発防止へと産科医療の質の向上を図り、過失責任での求償・提訴は後日にと、まずは家族への補償を先行する。他の重篤な医療事故へも同様の制度設計が望まれる。(卯蛙)