2012診療報酬/改定こうみる5
小児科(診療所)
診療所への影響は少ないが、在宅医療で一定の前進
理事 松尾 敏
小児科診療所にとっては今回の診療報酬改定による影響はほとんどないといえる。関連する変更点は幾つかあるが、ほとんどの診療所が算定しない点数であろう。
- 初・再診料
基本的に全ての点数変更はない。診療所における再診料の地域医療貢献加算が、時間外対応加算と名称変更され3分類となる。しかし、今回も算定する小児科診療所は少ないであろうし、患者さんも利用できないであろう。条件を完全に改めて、救急診療に参加している診療所医師のみが加算できるとした方が、有意義であろう。また名前が変わったため、明細書に「時間外対応加算」と記され、時間内に受診した患者さんから苦情がでている。名前の変更は改悪である。
- 医学管理等
小児特定疾患カウンセリング料や乳幼児育児栄養指導料、小児科療養指導料などの算定に「医療機関の屋内が禁煙であること」が算定要件に加えられた。
- 在宅医療
いくつかの点数が引き上げとなり、一定の評価はできる。1. 在宅患者訪問診療料の乳幼児加算と幼児加算が400点に引き上げられたが、小児科外来診療料を算定している場合、訪問診療料を算定できないことは今回も改善されなかった。2. 救急搬送診療料に長時間加算(500点)が新設された。3. 在宅患者訪問看護・指導料(同一建物居住者も)の長時間訪問看護・指導加算の対象患者が追加され、長時間の訪問看護を必要とする15歳未満の超重症児・準超重症児の場合は週3回まで算定できることになった。4. 排痰補助装置加算の対象疾患に脳性麻痺が追加された。在宅は盛りだくさんの改定だが、算定できる患者さんは限定的で、診療できる医師も限定的であり、抜本的な改善にはほど遠い。
- 検体検査・生体検査
小児科診療所に関連する新規の検体検査実施料として、総ヨウ素(尿)、ノロウイルス抗原定性(3歳未満の患者などで算定)などがある。また末梢血液像が自動機械法(15点)と鏡検法(25点)の2項目に分割された。
臨床心理・神経心理検査として、発達および知能検査の操作と処理がきわめて複雑なもの(450点)が追加され、WISC−?知能検査等が含まれる。眼科的検査では、行動観察による視力検査に乳幼児視力測定(テラーカード等によるもの)(60点)が新設された。
小児科(病院)
入院・専門医療等で増点・新設、
救急への診療所医師の評価が課題
京都第二赤十字病院小児科部長 清澤 伸幸
2000年度以降、小児の入院や救急に関する診療報酬は大きく改善され、消滅の危機にあった小児医療も漸く一息をついた感がある。2012年度改定においても重点項目の一つとして、小児の救急患者および重症患者の管理に関する点数の増点や新設がなされた。
◇ ◇
具体的には、入院基本料の乳幼児救急医療管理加算が200点の増点、地域連携小児夜間・休日診療料の50点増点。小児特定集中治療室管理料の新設(7日以内15500点、8日以上14日以内13500点)、特定集中治療室管理料の注の見直しで小児加算が増点(7日以内2000点、8日以上14日以内1500点)、新生児特定集中治療室退院調整加算の増点300点と入院中の退院支援計画作成加算の新設、小児入院医療管理料に関しては注の見直しがあり、放射線治療が包括から除外された。
また、超重症児(者)入院診療加算、準超重症児(者)入院診療加算の注の見直しで、在宅重症患者の入院受入がしやすくなった。小児医療技術に関してはRSウイルス抗原定性が1歳未満の乳児で外来においても算定が可能になったこと、遺伝学的検査、先天代謝異常症検査の項目追加や注の見直しがなされ、小児の専門学会からの要望の多くが認められた。また、医療技術が今回承認されなくても、その承認されない理由が明示され、今後の要望していくための戦略がたてやすくなった。
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なお、小児在宅患者が年々増加しており、小児の在宅患者特有な問題に対して十分な医療を保障する点数項目設定が必要である。今改定では在宅小児経管栄養法指導管理料が新設された。在宅成分栄養経管栄養法指導管理料は特定の人工栄養剤使用が要件とされ、それを使用せず経管栄養を行う重症小児障害児には在宅寝たきり患者処置指導管理料を算定するしかなかった。しかし、在宅小児経管栄養法指導管理料の新設により注入ポンプ加算および在宅経管栄養法用栄養管セット加算(名称変更)を算定することが可能となった。また在宅時医学総合管理料も併算定できることとなった。
以上、小児の入院医療や専門医療、在宅医療に関してはおおむね評価できる改定であったと考える。
今後は、小児医療提供体制の充実のための診療報酬体系の確立と小児救急医療体制を守るために、救急診療に診療所医師が参加していることに対する評価が必要である。
産婦人科
管理栄養士の配置義務化は影響大、
急性期の重点項目では引き上げ
理事 田中 正明
産婦人科に関する点数内容の変更点や特徴点を紹介する。産科の急性期医療が今改定の重点項目になっており、いくつかの項目において点数が引き上げられた。しかしながら、基本診療料等の施設基準等が改定され「栄養管理体制」の実施が、入院基本料の算定にあたっての必要要件とされた。入院加療にあたって栄養管理が必要なことはいうまでもないが、患者の病態、医療機関の形態等をまったく考慮せず、画一的に義務化されたことは、乱暴な改定といわざるを得ない。産婦人科においては有床診療所や単科病院も多く、管理栄養士の配置が義務化されたことによる医療機関の経営的・人員的影響は大きい。
産婦人科における主な変更内容は次の通り。
- 入院料
- 栄養管理、褥瘡患者管理の実施がすべての入院基本料の算定要件とされた。
- 入院基本料等加算のハイリスク妊娠管理加算、ハイリスク分娩管理加算が、それぞれ200点引き上げられた。
- 医学管理等
- ハイリスク妊産婦共同管理料(?)が300点引き上げられ800点に、またハイリスク妊産婦共同管理料(?)が150点引き上げられ500点となった。(?)(?)の対象患者に、多胎妊娠、子宮内胎児発育遅延の患者が追加された。なお、屋内禁煙の要件が導入された(7月実施)。
- 検 査
- 顆粒球エラスターゼ(子宮頸管粘液)が2点引き下げられた。
- HER2蛋白は、これまで乳癌が確定し、かつHER2蛋白過剰発現のある患者又は他の測定法により、HER2蛋白過剰発現の有無が確認されていない再発乳癌患者に限られていたが、乳癌をはじめとする他の悪性腫瘍の場合も対象となった。算定は、B001の「3」悪性腫瘍特異物質治療管理料の「ロ」で算定する。
- 乳腺穿刺又は針生検において、マンモトーム生検等による方法が評価され、「1 生検針によるもの」として区分が設けられて、650点とされた。
- 病理診断
- HER2遺伝子標本作製について、免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製のHER2蛋白を同一の目的で行った場合の点数(3050点)が設定された。なお、単独の場合は、200点引き上げられ、2700点とされた。
- 手 術
- K474〜K476―3の乳腺、乳管、乳房に関する手術、膀胱に関する手術、女性器に関する手術が大幅に引き上げられた。
- K910―2内視鏡的胎盤吻合血管レーザー焼灼術が新設された(要届出)