主張/看取りの場所は何処へ  PDF

主張/看取りの場所は何処へ

 現在形、過去形、過去完了形…といえば、中学、高校時代の英語学習で頭を悩ませた記憶が蘇る方も多いと思われる。

 「少子高齢化社会」こちらは紛れもなく現在進行形である。団塊の世代が高齢者の仲間入りをし、今後約25年間死亡者数は増加し続ける見込みとなっている。

 1976年に、医療機関で亡くなる人が自宅で亡くなる人よりも多くなって以来、その差は開き続けてきた。このまま死亡者数が増加すれば、医療機関で看取り可能な限度を超えてしまうのは明らかである。従って医療機関以外の看取り場所を拡大する必要性があり、今回の医療、介護両保険同時改定においてもその誘導策が提示された。医療保険についていえば、強化型在宅療養支援診療所・病院の新設、在宅ターミナル加算・看取り加算の再編、特別養護老人ホームにおける看取りに対して、従来算定できなかった訪問診療料や管理料を算定可とする等である。しかし、これら保険点数上の優遇策?にどれほどの効果が期待できようか?

 自宅で最期を迎えたいと思う人は多い。だが、望みが叶えられる人はごく一部という現実がある。在宅死を実現するには、家族に多大の負担がかかるため、言うに言えないと思う人が多数存在する。介護保険の新たな目玉サービスとして、24時間の巡回訪問介護・看護が注目されるが、都市部はさておき、動線が長く、効率の悪い地域でどれほど手が上がるか疑問である。更に、このような地域では、深夜に他人が家に入ってくることへの抵抗感が根強く存在する。

 一方、特別養護老人ホームはどうであろう。職員の熱意、配置医師の姿勢で大きな差がある。さらに自宅においても同様であるが、終末期になって初めて出現する親族の問題が無視できない。普段ケアを担っている人達と合意した方針が、突然現れた声高の人物によってぶち壊されることは少なくない。

 これらの要因を改善することなく、保険点数で誘導しても空しい。医師の立場として、主としてケアに当たってきた「キーパーソン」をサポートし、病院に送らないことが怠慢であるといった風潮を改めていく努力が必要と考える。

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