2012診療報酬/改定こうみる4
外科
新規技術の保険導入進む/診療所の手術等は据え置き
理事 渡邉 賢治
今回の診療報酬改定では、勤務医などの負担軽減や在宅医療の充実と並んで、新しい医療技術の保険導入などが進められた。外科系学会社会保険委員会連合試案第8版を活用して、難易度(技術度区分)がC、D、Eの約1200項目の手術料が引き上げられた。今回の改定では難易度が高いものだけでなく、中等度以下の手術料も引き上げられた。難易度C、Dは最大で30%、難易度Eでは最大で50%を原則として引き上げられた。
新規技術の保険導入では、肝切除術における画像支援ナビゲーションや内視鏡的大腸粘膜下層剥離術など、128件の新規の技術が導入されたほか、すでに保険導入されている150件について対象疾患などが拡大された。
また、胸腔鏡下・腹腔鏡下手術のうち、難易度などの一定の要件を満たす37項目の手術が保険導入された。このことで、胸腔鏡下・腹腔鏡下手術に関しては、今回の改定で認められたものを含め、相当数の手術が保険導入となった。これに伴って、安全性の確保のために緊急時の対応や医師の配置、実施件数の掲示など、施設基準が今回の改定で定められ届出が必要となった。
特定保険医療材料等に係る手術料について、22項目に関して、新設及び評価の見直しが行われた。
これらの手術点数の引き上げや新規技術の保険導入は一定の評価はできるが、診療所で汎用される創傷処理や手術料は据え置きとなったことから、手術に関しては病院中心の引き上げとなった。また、一般病棟7対1の基準として平均在院日数が18日以内、看護必要度基準が15%以上になり、13対1、15対1を算定している病棟では、90日を超えて入院する患者についての評価体系の見直しなど、医療機関の機能分化を進めようとしていることなどを考えると、手術料の引き上げが、病院経営や勤務医の負担軽減につながるかは疑問である。また、手術料の引き上げは、技術料の評価としては喜ばしいが、患者負担が増えるという制度の矛盾が解消されなければならない。
整形外科
外来リハ診療料が新設/手術や検査等で評価広がる
理事 田中 伸明
整形外科に関する今次改定の内容を説明する。まず新設項目では、医学管理等で外来リハビリテーション診療料(要届出)が新設された。疾患別リハビリテーションを要し、状態が比較的安定している入院外の患者が対象となる。診療料1(69点)は1週間に2日以上、診療料2(104点)は2週間に2日以上の疾患別リハを要する患者に対し、疾患別リハの実施に関し必要な診療を行った場合に算定する。診療料1又は2を算定した日から7日間又は14日間は疾患別リハの実施に係る初・再診料は算定することができないが、要件を満たせば同期間は医師の診察がなくても疾患別リハビリテーション料を算定できる。
手術の新設点数の主なものは以下の通りである。観血的整復固定術(インプラント周囲骨折に対するもの)、難治性感染性偽関節手術(創外固定器によるもの)、関節鏡下自家骨軟骨移植術、関節鏡下関節内骨折観血的手術、関節鏡下肩関節唇形成術、腫瘍脊椎骨全摘術(要届出)。
神経ブロックでは以下のものが追加された。腰神経叢ブロック、不対神経節ブロック、前頭神経ブロック、仙腸関節枝神経ブロック、頸・胸・腰椎後枝内側枝神経ブロック、脊髄神経前枝神経ブロック。
リハビリテーションにおいては、早期リハビリテーション加算が45点から30点に引き下げられ、初期加算45点が新設された(要届出)。リハビリテーション科の常勤医師が1名以上配置されている医療機関の入院患者に対して疾患別リハを実施した場合、起算日から14日以内に早期リハビリテーション加算と併せて算定できる。
増点された項目では、小児創傷処理(6歳未満)の筋肉、臓器に達するもの・長径10cm以上が、660点増点され2860点となった。また、デブリードマン100cm2以上3000cm2未満、3000cm2以上がそれぞれ2990点、6250点になった。筋電図検査では、誘発筋電図を2神経以上に対して行う場合の加算点数の上限が450点から1050点に増点された。抗シトルリン化ペプチド抗体定性又は定量の検査については、関節リウマチの診断補助とは別に、治療薬の選択目的にも患者1人につき1回限り算定できることになった。
最後に本年3月より開始された電子レセプトの突合点検に関連して、外用剤、中でも貼付剤(シップ)に対する適応病名のチェックが必要であると思われる。