一体改革関連法案の動向/重要法案を「一括審議」  PDF

一体改革関連法案の動向/重要法案を「一括審議」

増税と社会保障構造改革路線を疾走中

 第180通常国会に「一体改革関連法案」が相次いで提出されている。一体改革が対象とする社会保障制度改革は多岐にわたる(表参照)。政府は「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会」を衆議院に設置し、「一括審議」に付す方針。事態は常に政局を絡めて推移しており、「消費税増税」がその焦点になっている。

相次いで提出される「関連法案」

 一括審議の審議対象は関連法案のすべてではなく、11法案。うち、消費税増税法案と称されるのが「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革をはかるための消費税等の一部を改正する等の法律案」である。2014年4月1日に消費税率を地方消費税とあわせ8%に引き上げる。その翌年、15年10月1日に同じく10%に。同時に、所得税の最高税率引き上げや相続税法改正等も盛り込む。消費税は、「使途の明確化」をし、「地方交付税法に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てる」。ただ、「共通番号制度3法案」など4法案を分離し、7法案(表中★)に絞ることが、自民・公明と合意したとされる。

保育改革・公的責任による「現物給付」解体

 一方、社会保障改革で一括審議に付されるのが、年金と「子育て支援」である。

 「子ども・子育て支援法」等が目指す「新保育システム」は、現場から批判の声が巻き起こっている。現行保育制度は、市町村の保育サービス実施義務を明確にし、その下でサービスを「現物給付」している。これを解体し、介護保険制度同様の「現金給付化」、提供主体と保護者の直接契約への改変等が目論まれている。本来、現物給付原則は、国による権利保障の大原則であり、保育分野で突破を許せば、次は医療に波及することが予想に難くない。

 いずれも重要な内容を含む法案であり、一括審議で一気に成立を目指すことは、各法案を国民の前で徹底して議論し、検討する機会を失することになる。

医療関係各法の動向と「障害者自立支援法」

 今回、一括審議対象とされていないが、医療関係法案も提出が予定されている。既に「国民健康保険法改正案」が国会成立(4月5日)。同法は市町村国保財政の「都道府県単位化」を進める。他に医療法や保助看法の改正、後期高齢者医療制度「廃止」、介護保険制度改正等の提出が目指されているが、未だ提出されていない。

障害者自立支援法をめぐる動向も焦点である。「新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律案」は、現在の「障害者自立支援法」を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」に名称変更し、障害児者の範囲に難病を加え、重度訪問介護の対象拡大等が盛り込まれている。しかし、同法案は、全国に広がった「違憲訴訟」の「和解」で、国が約束した自立支援法「廃止」と新法制定に背くものと、抗議の声が広がっている。和解後、政府が設置した「総合福祉部会」で、当事者を中心に「障害者総合福祉法」の骨格提言がまとめられた。これは画期的な出来事であるが、提出された法案はその内容を反映せず、現行法の枠組みでの改定に止めるものとなっている。国は「制度を廃止すれば混乱が広がる」と説明している。これは、政権交代以前、後期高齢者医療制度廃止を回避するために用いられたのと同じ便法である。

いずれにせよ、提案された新制度は、子どもたちや障害のある人たちの権利保障の観点から設計されているとは言えず、構造改革路線の延長線上の提案である。これでは、「社会保障改革」を隠れ蓑に増税を進めつつ、結果として増税と社会保障構造改革という2つの思惑が同時達成されることになる。医療や社会福祉制度は、この国に暮らす人たちが人間らしく生きることを、国が保障すること自体を目的にしたものでなくてはならない。

特別委員会で対象とする11法案

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