2012診療報酬・改定こうみる3  PDF

2012診療報酬・改定こうみる3

“落穂拾い”の内科、再診料の復点が必要

内科

部員 佐々木善二

 今回診療報酬の改定は全体で0・004%アップとなった。しかし、内科開業医の立場はミレーの名画“落穂拾い”の中に描かれた農民そのものである。薬剤費切り下げによる5500億円の財源も、設備が整い高度な医療技術を持つ大病院を頂点とする急性期医療と、多機能を有する「機能強化型」在宅療養支援診療所、在宅療養支援病院を頂点とする在宅医療に重点的に割り当てられている。内科開業医は在宅医療の一線に関わっているにもかかわらず、緊急・夜間・深夜往診料だけでなく、訪問診療によるターミナルケア加算まで差をつけられている。

 今回の改定内容の速報にじっくり目を通した、ある内科医院の事務の人がつぶやいた一言は「検査点数が少し変わっているだけですね」だった。この状況の中で“落穂”の数は限られている。診療所の地域医療貢献加算(3点)に代わるものとして時間外対応加算と名称変更され、同時に(1)5点(2)3点(3)1点と改変された。今回は算定の要件がより具体的になった。無理なく対応できる(2)の平日午後10時まで電話対応可の届出が妥当であろうか?

 処方せんを交付した場合の一般名処方加算(2点)は、後発品のある医薬品について一品目でも一般名による処方をすることにより算定が可能。他に評価できる点としては、1. 静脈の採血料が16点に引き上げられた、2. 在宅酸素療法指導管理料に係る加算が2月に2回算定できるように改善された、3. 喘息治療管理料等の算定にあたり、医療機関の屋内禁煙が必要となった、4. 早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術(要届出)の保険適用、5. ノロウイルス抗原定性の保険適用等がある。

 疑問点は、定性・半定量・定量と区別された検査項目が多数あり、同一点数であれば定量に統一すべきでないか。問題点は、一般内科開業医に在宅医療にも力を注ぐよう求める一方で、明確な理由を明らかにせず(重症患者の場合、確実な後送医療機関をもっていないという理屈から?)、緊急・夜間・深夜往診の時点ですでに往診料に差をつけることが不当であると声を大にする必要がある。また、据え置かれた再診料についても診療所では以前の点数(71点)に戻すべきである。

点数アップや要件緩和も、在宅推進の大前提に課題

在宅医療

理事 吉河正人

 今次改定においても、在宅療養を推進するため種々の誘導が行われた。

 第一に強化型在宅療養支援診療所・病院の新設が挙げられる。従来と比べて、往診料の加算、在宅ターミナルケア加算、在宅時医学総合管理料等においてかなりの高点数となっている。算定要件(内容省略)の中で、常勤医3人以上については病院以外ほとんど該当しない。そのため、複数の医療機関が連携した場合も強化型と認めることとなっている。ただし追加要件として1. 連絡先電話番号の一元化、2. 月1回以上のカンファレンス開催があり、1. については、主治医以外の医療機関が連絡先となって、受けた側も戸惑うケースが多くなると思われ、非現実的である。

 死亡者数の増加に対して病院以外の看取り場所確保のため、ターミナルケア加算と看取り加算が分離再編された。点数は少し下がったものの要件が緩和され、算定しやすくなった。また、特別養護老人ホームの末期悪性腫瘍以外の患者についても、病名に関わらず死亡前30日以内に限り訪問診療・ターミナルケア加算・特定施設入居時医学総合管理料が算定可となり、同一建物居住者訪問診療料が引き上げられた。

 訪問リハビリテーション、訪問看護においても一定の改善がなされ、特に退院直後14日間は医療保険による訪問看護が可能になった点が評価される。

 指導管理料において、在宅酸素療法・持続陽圧呼吸療法の材料加算が2カ月に2回算定できることになったのは改善といえ、特定保険医療材料に皮膚欠損用創傷被覆材と非固着性シリコンガーゼが追加されたことは、在宅における褥瘡治療に大きな戦力となろう。

 以上述べたように、点数設定に関しては引き上げや改善がなされたといえるが、大前提となる在宅療養全体の状況(核家族化・老老介護・認認介護・地域コミュニティーの崩壊等)をどうするのか課題は大きい。

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