「急性期病床群」を医療法で位置づけ/医療機関の機能評価強化の方向
厚生労働省は2011年11月7日、社会保障審議会・医療部会において、病床区分を見直し、医療法上で一般病床に新たに「急性期病床群(仮称)」の区分を設ける方針を提案。「急性期医療に関する作業グループ」というワーキンググループを立ち上げ検討を開始しており、3月21日時点までに第5回会合までを開催している。
「急性期病床群」を第6次医療法で位置づけようとする国の狙いは、医療の機能分化を通して、都道府県が作成する医療計画の実効性を強化すること、ひいては都道府県そのものの、権限強化を図りたいからだと考えられる。これは、医療計画そのものを、医療提供体制の効率化の手段とすることに他ならない。また、現在、一般病床で受け入れている軽度・リハビリテーション・療養の患者を急性期病床群の対象から外すことで、急性期医療の定義づけがなされ、入院医療そのものが変質する危険性がある。医療機関の機能評価を行い、一般病床の機能分化を進めるものであり、これを起点に今後、有床診も急性期病床群を担う対象になりうる。第6次医療法改正に「急性期病床群」が盛り込まれれば、医療計画の性格が大きく変わる転換点となる。以下、現在検討されている「急性期病床群」の概要を紹介する。
「急性期病床群」とは、一般病床において、「比較的高い診療密度を要する医療を提供する病床(群)」(図1)であり、これを医療法上に位置づけ、一般病床の機能分化を図るものとしている。「比較的高い診療密度を要する医療」とは、例えば心筋梗塞による入院や、手術前の患者のように、状態が不安定であって、症状の観察などの医学的管理や、創傷処置などの治療を日常的に必要としている場合等が想定されている。
現在の医療法上の病床区分は、一般・療養・結核・精神病床となっているが、この一般病床の中に、病棟を基本とした「急性期病床群」を設置(病院全体でも可能)。現行の許可制度ではなく、認定制度とし、各医療機関が自主的に都道府県に申請する。
認定のためには、病床許可要件である人員配置基準、構造設備基準に加え、新たに「提供している医療の機能や特性」という要件が付加される。(図2)
「提供している医療の機能や特性」とは、救急入院患者割合や手術を受ける患者割合が一定以上であることや、平均在院日数で規定することが検討されている状況。
認定を受けた医療機関は、定期的に、必要な事項を都道府県に報告するとともに、一定の期間ごとに認定の更新を受ける。
なお、要件を満たさなくなった場合には、直ちに認定全体の取消しを行うのではなく、認定される病棟範囲の変更や一定期間の猶予など、医療機関の個別の事情に配慮した仕組みを設けることも検討されている。
こうした「急性期病床群」を医療法で位置づける効果は、診療報酬だけでは十分に対応できない「機能の見える化」「医療計画の推進」が図られることだとしている。「見える化」は医療機関が地域の中で担うべき機能を自ら確認・点検することで、医療の質の向上が図られ、「医療計画の推進」は都道府県が認定に関与することで、急性期医療の実態に即した医療計画の策定が期待できるとしている。
国は今まで以上に、医療機関の機能を評価し、分化する方向を強めており、在宅医療に関しても、そうした視点が取り入れられる可能性がある。国が目指す医療提供体制のための医療機関の評価や機能分化ではなく、患者にとって望ましい医療のあり方を現場の立場から検討すべきではないだろうか。