2012診療報酬/改定こうみる1  PDF

2012診療報酬/改定こうみる1

診療所、中小病院の外来機能は殆ど評価されず
基本診療料の引上げ運動が必要

入院外

理事長 関 浩

 3月5日に開かれた厚生労働省主催の説明会において、2012年度診療報酬改定の財源配分は、入院+2・07%、3300億円、入院外+1・01%、1400億円と公表された。ただし、この外来1400億円には在宅医療が含まれる。翻って2月10日の中医協資料では、在宅医療の充実に1500億円を配分したとされている。以上から、在宅医療の充実をはたすため連携に関わる入院側に大きな評価を与え、外来1400億円の多くが在宅医療に配分されたものといわざるを得ない。つまり、「疾病の早期発見、早期治療、慢性疾患の管理」という診療所、中小病院が果たしている外来機能はほとんど評価されていない改定になったことは明確である。

 事実、再診料を71点に引き戻すことは叶わなかった。同一日2科目の再診料(異なる医師の場合)が新設されたが、外来管理加算が併算定できず、また34点という低点数設定のため、1科目で内科的管理を行い、2科目で処置等を行った場合は2科目再診料を算定しない方が点数は高いという不合理が生じる。

 再診料の地域医療貢献加算は時間外対応加算3区分に再編された。地域医療貢献加算を届け出ていた診療所が時間外対応加算2を算定する場合は、新たな届出は必要ない。電話等の問合せに常時自院で対応できる場合は、1(5点)の届出を4月16日までに届け出れば、4月1日から算定できる。

 小宮山厚労大臣の意向により、今年7月1日から、悪性腫瘍特異物質治療管理料や生活習慣病管理料を含む14の医学管理料に、医療機関の屋内禁煙の基準が導入される。注意が必要だ。自宅併設の場合や、テナントの場合は、医療機関の保有または借用している部分が禁煙であれば良い。

 全ての開業医に関係があるのは「後発医薬品の使用促進策」の更なる強化だ。1.処方せん様式及び記載要領が変更され、個々の処方薬について、後発医薬品への変更に差支えがあると判断した場合、個々の医薬品について、「変更不可」欄にそれぞれバツ印等を付すことになった。保険医に新たな負担を求める場合は診療報酬上の評価を上積みすべきであるのに、処方せん料本体を据え置いたことは問題だ。2.処方せん料に一般名処方加算2点が新設された。調剤薬局の在庫負担(同一成分の後発品を複数抱えざるを得ない現状)は改善されるべきだ。しかし、安心して処方できる後発医薬品の品質改善を通して、銘柄と後発医薬品メーカーの絞り込みが優先されるべきだろう。保険医に一般名処方が強制される流れを作ってはならない。会員各位には慎重な対応をお願いしたい。

 2012年度改定のキーワードは「再編」と「連携」だが、これは患者に対する直接的な「療養の給付」の充実ではない。入院から在宅への患者の流れをスムーズにするために様々な施策が点数化されたが、これは本来、診療報酬以外の施策で検討されるべきものである。「療養の給付」としての診療報酬のあり方が歪められた。「社会保障・税一体改革」が描く「医療・介護サービス提供体制改革」実現に向けた第一歩に固執し、診療所、中小病院の外来機能を評価しなかった今回の改定の問題点は、今後、本紙による各科からの報告で明らかにされよう。

 最後に、昨年秋に京都協会が実施した「初・再診料に関するアンケート」に基づく再診料改善要求運動を受けて、保団連社保・審査対策部会においても全国規模のアンケートの実施が検討されている。保険医の実態に基づき、「診察にあたって、基本的な医療の提供に必要な人的、物的コスト」を基本診療料の別枠に新設させるとともに、医師の「診察にあたって、個別技術にて評価されないような基本的な診察や処置等」の費用としての初・再診料を引き上げるため、この運動を是非とも成功させるよう保団連とともに活動していきたい。

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